羽生九段 “天敵”永瀬王座破り無傷5連勝 首位独走!藤井王将挑戦権まで「マジック1」
2022年11月01日 04:50
芸能
後手番とは思えないほど、序盤から積極的に仕掛けた。角替わり腰掛け銀のオーソドックスな進行に50手目△7五歩とくさびを入れる。「ちょっとやってみたかった」。つまり用意していた作戦だ。昼休み前から激しい戦いとなり、AIも形勢判断に悩む混戦を経て、永瀬の81手目▲3三歩に対抗したカウンターが勝負の分かれ目だった。
「皆目予想のつかない感じで難しいかと。なにかちょっと足りないと自信のない展開でした」
最終盤は自王の詰み筋を丁寧に消しつつ永瀬王を挟撃し、受けの1手△2二歩(90手目)で「意外と良くなった」と勝利を確信した。
実は永瀬には相性が悪い。この日の対局前までなんと4勝12敗。しかも蛇ににらまれたカエルのように5連敗中だった。今局も劣勢がささやかれたが、終わってみれば全盛期に近い指し回し。「序盤の構想がどうだったか。もしかして作戦としてよくなかったかも」と反省を口にしたにもかかわらず…。
まさに破竹のリーグ5連勝でプレーオフ以上確定。1敗で追走する豊島将之九段(32)が11日か15日に敗れた時点で藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=への挑戦権を得る。「(5連勝は)自分でも予想できなかったこと。ただ次の対局に全力を尽くしたい」。レジェンドの静かな決意がハロウィーンの夜に溶け込んでいった。(我満 晴朗)
≪「常に苦しい」永瀬王座2敗に≫2勝2敗に後退した永瀬は終局後、「常に苦しいと思った。形勢判断が難しい将棋だった」と振り返った。互角で突入した終盤、長考を重ねて攻め合い、形勢を損ねた選択を悔いた。受け将棋の棋風で知られるが、羽生の88手目[後]3二歩に「自分の中に類型がなかった。素晴らしい手を指されたのでは」。痛恨の黒星にも新感覚を吸収しようと試み、残り2局、リーグ残留も陥落もありうるだけに気持ちを締め直した。