「silent」プロデューサー語る(上)「この2人のラブストーリーが見てみたかった」
2022年11月03日 10:00
芸能
![「silent」プロデューサー語る(上)「この2人のラブストーリーが見てみたかった」](/entertainment/news/2022/11/03/jpeg/20221102s00041000749000p_view.webp)
このドラマの世界観はどのように生まれたのか。
村瀬健プロデューサーは「丁寧に“人のことが好き”という気持ちを描いていく作品が少なくなっている中で、昔のような大人の“しっとり”としたラブストーリーをやりたかった」と話す。
恋愛要素に加え、想の耳が聞こえなくなることが物語の大きな核。ここには、音楽好きな自身が時々感じていた「好きな音楽を聴けなくなったらどうなってしまうのか」という思いがベースにある。
「ラブストーリー」「音を失う」という素案を、脚本家の生方(うぶかた)美久氏に伝えた。生方氏は昨年「フジテレビシナリオ大賞」を受賞し、村瀬氏が「一緒にドラマをやりたい」と感じた注目株。その生方氏によって「音のない世界での再会」という筋書きが完成した。
この独特な世界観のドラマを手がけるに当たって、村瀬氏が「この2人で見てみたい」と思い浮かんだのが川口と目黒だった。
川口については「華がある一方、YouTubeでありのままの姿を披露しているように、飾らない」という印象を持っていた。実際に飾り気のない性格が同性に支持されており「女性が共感してつい見たくなってしまうヒロイン像を描ける」と感じたという。
起用は的中した。「声を大にして言いたい。良い女優と思っていたが、ここまで凄いとは…」と舌を巻くほど。特に驚かされたのは、8年間の“ギャップ”の演じ分けだった。
回想シーンでは恐れを知らないキラキラした18歳を自然に表現。想との別れや社会人の苦労を経験した一方で、鈴鹿央士(22)演じる戸川湊斗(とがわ・みなと)という新しいパートナーを見つけ、穏やかさを得て大人になった26歳は等身大で演じた。
村瀬氏は「目の大きさ、声の高さ、笑い方、歩き方などすべての所作を使い分けて演じているんです」と、川口の演技力の高さを驚きを交えて評した。視聴者からも、そのきめ細かい演技を絶賛する声があがっている。
その川口の相手役を務めているのが目黒。最初の印象は「なんだこのカッコイイ人は!立ってるだけでカッコイイ」というものだった。一方、フジテレビドラマ「教場2」や、テレビ朝日ドラマ「消えた初恋」などの出演作を見るうちに「きっと芝居が好きで一生懸命に役を演じるまじめな人なんだろうな」と画面越しに感じていたという。
その直感は当たった。目黒は出演が決まるとすぐに、多忙な中でも「手話の練習をやりたいやりたい」と直訴。村瀬氏はその真摯(しんし)な姿勢を今作の中でも生かそうと、目黒本人や生方氏と相談しながら想のキャラクターをつくり上げた。満足のいくキャラクター像に「まさに当て書きならでは」と手応えを口にした。
徹底した役作りは手話などの細部にも宿っている。特に第1話終盤で見せた演技は圧巻だった。“再会”して話しかけてくる紬に手話とつらく切ない表情で「声で話しかけないで」や「うるさい」と訴える。耳が聞こえなくなったことを打ち明けるが、手話を知らない紬には伝わらない。このシーンに「胸が張り裂けそう」と視聴者の涙腺は崩壊。一気にドラマの世界観に引き込まれていった。
村瀬氏は目黒の演技に「凄い役者さんになると思う」と太鼓判を押す。「まだあまり言えないですが…」と前置きした上で「音を失う前後で想の中で変わらないこと、変わってしまったことを一緒に練った。それも丁寧に演じ分けてくれる」と明かした。
プロデューサーの想像を上回る川口と目黒の演技が物語をより輝かせている。きょう3日には第5話が放送される。村瀬氏は「紬、想、湊斗の三角関係にとにかく注目してください」と呼びかけた。