「鎌倉殿の13人」“母の勘”つつじ涙の懇願 愛息・公暁も悩んだ末に…寛一郎&北香那“初絡み”の舞台裏
2022年11月21日 11:00
芸能
稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。物語は、江戸幕府まで続く強固な武家政権樹立を決定づけた義時と朝廷の決戦「承久の乱」へと向かう。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は大河8作目にして初主演に挑んだ。
第44回は「審判の日」。後鳥羽上皇(尾上松也)の計らいにより、右大臣に叙されることとなった3代鎌倉殿・源実朝(柿澤勇人)。政子(小池栄子)が愛息の栄達を喜ぶ中、鎌倉殿への野心に燃える公暁(寛一郎)は三浦義村(山本耕史)の元を訪れ、鶴岡八幡宮で執り行われる拝賀式について密談を交わす…という展開。
「明日、実朝を討つ」――。公暁は義村に襲撃計画を明かした。
建保7年(1219年)1月27日。
公暁の異変を察知したのか、母・つつじ(北香那)が訪ねてくる。
つつじ「参籠から、出入りを繰り返していると聞きました」
公暁「ちゃんとその都度、一からやり直しております」
つつじ「おかしなことを考えてはいませんか」
公暁「なぜそうお思いですか」
つつじ「(立ち上がり)あなたの母親だからです。厳しい修行をしている隣で、実朝様の右大臣の拝賀が行われようとしている。恨みも募りましょう」
公暁「そんなことはない。めでたいではないですか」
つつじ「あなたはあなたの道を生きるのです。立派な僧となって、八幡宮の別当として、鎌倉殿をお支えする。それが天から与えられた道」
公暁「では、母上が与えられた道とは何なのですか。父上を無残に殺され、息子を仏門に入れられ、暗君の妻として謂れなき汚名を受けて生きなければならなかった、母上の道とは…」
つつじ「誰がそんなことを」
公暁「この公暁、すべてを知っております」
つつじ「私は少しも悔いてはおりません。なぜだが分かりますか。頼家様が私に授けてくれたあなたがいたから。あなたがすべきは、千日の参籠を成し遂げること。命を危うくしてはなりません。生きるのです。父上の分も」
つつじ役・北と成長した公暁役・寛一郎の芝居は、このシーンが最初だった。
保坂監督は「役者としては“初めまして”でも、役としては母子。しかも、つつじと公暁という母子の関係性となると、いきなりつくれるものでもないと思うんですが、スケジュールの兼ね合いで、事前のリハーサルができず。それで少し不安だったのですが、撮影の直前に寛一郎さんが急に北さんの目の前に座って、公暁がいかにつつじのことを愛しているか話し始めたんです。北さんもその意味をすぐに感じ取って、つつじの息子に対する思いを伝えていました。周りで機材セッティングしてザワつく中、時間にしたらわずかなんですけど、2人だけの時間がそこには流れていて。これまでも個人的には俳優部同士の事前のコミュニケーションによって支えられた場面が多かったんですけど、このシーンも、お二人が相当な熱量を持って臨んでくれたからこそ撮れたと思っています」と感謝した。
“坂東の巨頭”上総広常役の佐藤浩市が板画家・棟方志功氏をイメージして“はいつくばり手習い”シーンを演じるなど、今作は出演者からのアイデアも豊富。クリエイティビティーあふれる撮影現場となっている。
夜、鶴岡八幡宮の大階段。雪が降る中、拝賀式が始まる。公暁は悩んだ末に、実朝はおろか、北条義時(小栗)討ちまで企み、大銀杏の陰に潜んだ。母の願いは届かず。次回第45回は「八幡宮の階段」(11月27日)。ついに鎌倉最大のミステリーにして鎌倉最大の悲劇「実朝暗殺計画」が描かれる。
◇保坂 慶太(ほさか・けいた)2007年、NHK入局。最初の赴任地は新潟局。12年からドラマ部。大河ドラマに携わるのは14年「軍師官兵衛」(助監督)、16年「真田丸」(演出・3話分)に続いて3作目。「鎌倉殿の13人」は第6回「悪い知らせ」(2月13日)、第9回「決戦前夜」(3月6日)、第15回「足固めの儀式」(4月17日)、第20回「帰ってきた義経」(5月22日)、第26回「悲しむ前に」(7月3日)、第31回「諦めの悪い男」(8月14日)、第35回「苦い盃」(9月11日)、第39回「穏やかな一日」(10月16日)、第44回「審判の日」(11月20日)を担当した。NHKが新たに立ち上げた脚本開発に特化したチーム「WDR(Writers’Development Room)プロジェクト」の代表も務める。