【鎌倉殿の13人 秘話2】安藤監督が語る名場面 義経&時政“経験と自信”義時&義村“あうんの呼吸”
2022年12月12日 15:00
芸能
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大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。最終回は、江戸幕府まで続く強固な武家政権樹立を決定づけた義時と朝廷の決戦「承久の乱」が描かれる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は大河出演8作目にして初主演に挑んだ。
安藤監督にとって特に印象に残るのは、第19回「果たせぬ凱旋」(5月15日)のラスト。「壇ノ浦の戦い」に勝利したものの、源頼朝(大泉洋)と源義経(菅田将暉)の間には亀裂。挙兵に追い込まれた義経はいったん九州へ逃げ、再起を図る。そして、上洛した北条時政(坂東彌十郎)と北条義時(小栗)の宿所に姿を現した。
「兄上とのこと、今から何とかならぬか」。義経の一縷の望みも叶わない。「祈るような思いでここへ来てみたが、無駄だったか」「平家を滅ぼしたのは、ついこの間ではないか。私の何がいけなかった」と落胆。奥州へと向かう。義経の去り際、時政が言葉を掛けた。
時政「あなたはおっしゃった。(立ち上がり)経験もないのに自信もなかったら、何もできぬと。では、自信をつけるには何が要るか。経験でござるよ。まだまだこれからじゃ」
義経「(振り向き)さらばだ」
雪が舞っている。
時政「まるで、平家を滅ぼすためだけに、生まれてこられたようなお方じゃな」
義時「九郎殿は、真っすぐすぎたのです。うらやましいほどに」
安藤監督は「梶原景時(中村獅童)が『(戦神の)八幡大菩薩の化身』とまで評した義経の、抜け殻のようになってしまった変わり様。そして、義経に生き延びてほしいのに為す術がない時政と義時。お三人の佇まいと時政の台詞が特に印象に残っています。自分も演出の経験が浅い中で、今回の作品には自信を持って挑まないと、周りも付いてきてくれない。でも、それは決して簡単なことじゃないので、自分にとっても凄く響く台詞でした」と述懐。
常陸の佐竹義政(平田広明)攻めの軍議の際、義経が上総広常(佐藤浩市)に「経験もないのに自信もなかったら何もできない。違うか」と反論した第10回「根拠なき自信」(3月13日)も、安藤監督が演出した。
「他の御家人が皆、義経に呆れる中、時政だけは『しかし九郎殿は面白い』『よう言うたもんだのう。結構、結構』と笑って受け止めるんですよね。その時政がこの台詞をリフレインして『死んではならん』と義経を見送るのは、感慨深いものがありました。彌十郎さんとは、あまりシリアスにならず、笑みがこぼれるぐらいの言い回しで、とどちらからともなくお話ししました」
また、第24回「変わらぬ人」(6月24日)、義時と三浦義村(山本耕史)のシーンも忘れがたい。
酒を酌み交わしながら、義時は伊豆へ流罪となった源範頼(迫田孝也)の話を切り出した。
義村「俺さ、隠居しようと思うんだ」「裏切ったり裏切られたり、いい加減飽きた」
義時「おまえはいつも、俺の一歩先を歩いてるな」
義村の右手と義時の左手が同時に徳利へ。
義時「本気じゃないだろ」「もう少し、付き合ってくれよ。酒のことじゃないぞ」
「実朝暗殺」をめぐっては化かし合いを繰り広げた2人だが「ここの雰囲気がとても好きで。僕からのお願い事は特になく、不思議な友情を自然に出していただきました。お互いの手が同時に徳利に伸びて触れ合うのは、リハーサルの時に偶然生まれた動きなんですけど、小栗さんと山本さんならではの、呼吸がピタリと合った賜物だと思います。権力を握る前の、まだ若さが残っている義時と義村の関係性が見えるシーンの動きとして凄くよかったので、本番でも採り入れました」。いよいよ“最終決戦”「承久の乱」(1221年、承久3年)へ。生涯の盟友を待つ運命は…。
◇安藤 大佑(あんどう・だいすけ)2008年、NHK入局。最初の赴任地・佐賀局時代の10年には、ショートドラマシリーズの一編「私が初めて創ったドラマ 怪獣を呼ぶ男」(主演・星野源)の作・演出を手掛けた。12年からドラマ部。大河ドラマに携わるのは13年「八重の桜」(助監督)、14年「軍師官兵衛」(助監督)、17年「おんな城主 直虎」(演出・1話分)に続いて4作目。「鎌倉殿の13人」は第10回「根拠なき自信」(3月13日)、第14回「都の義仲」(4月10日)、第19回「果たせぬ凱旋」(5月15日)、第24回「変わらぬ人」(6月19日)、第28回「名刀の主」(7月24日)、第45回「八幡宮の階段」(11月27日)を担当した。
=最終週インタビュー(3)に続く=