【鎌倉殿の13人 秘話8】小栗旬の魅力「根っからのリーダー気質」憎み切れない義時「人間力の表れ」
2022年12月16日 09:00
芸能
大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。最終回は、江戸幕府まで続く強固な武家政権樹立を決定づけた義時と朝廷の決戦「承久の乱」が描かれる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は大河出演8作目にして初主演に挑んだ。
毎日メッセージを書き込み、名言「全部大泉のせい」も生んだ“小栗マスク”をはじめ、小栗の座長ぶりは既に視聴者にも知られるが、末永監督は「根っからのリーダー気質をお持ちの方。もしも別の仕事をしていたとしても、みんなが慕うリーダーになっているんじゃないでしょうか。役者・小栗旬を支えているのは、実は人間力なのかなと思います」と評した。
若手の小林直毅監督の担当回だが、第37回「オンベレブンビンバ」(9月25日)の北条家“最後”の集い。北条時政(坂東彌十郎)は酒を飲みながら「オンベレブンビンバー」と唱え続けている。北条義時(小栗)は一人、輪から離れ、縁側に。政子(小池栄子)が何と言っているのか尋ねると、時政は「忘れたのか。大姫(南沙良)が教えてくれたまじないじゃ。これを唱えると、いいことがある。オンベレブンビンバー」。そこから“思い出し合戦”が始まる。
政子「ウンダラホンダラゲー」
義時「(輪に入り)覚えてますよ。ピンタラポンチンガー」
北条時房(瀬戸康史)「プルップ…」
実衣(宮澤エマ)「ウンタラプーポンパー」「ウンタラプーソワカー」「ウンタラクーソワカー」「ボンタラ、ボンタラよ」
5人は「ボンタラクーソワカー」の大合唱。「正しくは、オンタラクソワカ、である」(語り・長澤まさみ)――。
「あそこの義時は会話に入る前と後で雰囲気がガラッと変わって、一本筋の芝居じゃないから、実はなかなか難しいはずなんですが、サラリと演じられてしまうのが、あらためて凄いと思います。もう37回なので、三谷さんの笑いとシリアスの振れ幅もつかみ切っていたのかもしれないですけど、ああいうコメディーパートで振り切っても、義時の大幹はブレていないから、義時の葛藤がしっかり伝わってきますよね」。“漆黒の執権”として粛清を続けてきたが、憎み切れない。「小栗さんの人間力、包容力、バイタリティーの表れだと思います」と総括した。
末永監督の最後の担当回となった第46回「将軍になった女」(12月4日)、義時は妹・実衣に罠を仕掛け「首をはねる」「だからといって許せば政は成り立たん!」と暴走。後鳥羽上皇(尾上松也)との駆け引き中には、愛息・北条泰時(坂口健太郎)に「太郎!もういい。おまえの声は耳に障る。行け」。食事中、のえ(菊地凛子)が愛息・北条政村(新原泰佑)を跡継ぎに、と申し出ると、箸をお膳に投げつけるなど、ピリピリムードは頂点に達した。
「46回の時、小栗さん自身は『今までとそんなに変わらない』とおっしゃっていましたが、流石に近寄りがたい雰囲気がありました。47回(政子の大演説)に向けて義時をとことん孤立させなきゃいけないですよね、というお話をさせていただいていましたが、パーフェクトに演じてくださいました」。最終回のサブタイトルは「報いの時」。義時を待つ運命は…。
◇末永 創(すえなが・そう)1994年、NHK入局。東京・エンターテインメント番組部(当時)を振り出しに、秋田放送局を経て、2002年からドラマ部。大河ドラマに携わるのは13年「八重の桜」(演出・10話分)、15年「花燃ゆ」(演出・14話分)に続いて3作目。「鎌倉殿の13人」は第4回「矢のゆくえ」(1月30日)、第7回「敵か、あるいは」(2月20日)、第12回「亀の前事件」(3月27日)、第16回「伝説の幕開け」(4月24日)、第21回「仏の眼差し」(5月29日)、第27回「鎌倉殿と十三人」(7月17日)、第33回「修善寺」(8月28日)、第36回「武士の鑑」(9月18日)、第42回「夢のゆくえ」(11月6日)、第46回「将軍になった女」(12月4日)を担当した。
=最終週インタビュー(9)に続く=