羽生九段「予定の作戦」“奇策”一手損角換わり 採用率4・8% 藤井王将揺れる心情「想定したわけでは」
2023年01月09日 05:00
芸能
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「予定の作戦というか、戦型ではあります」と種明かしをする羽生。後手番で同様の進行(類型含む)を選んだのは通算1102局中、これが53局目だ。採用率は4・8%。ダルビッシュ(MLBパドレス)並みに七色の変化球を誇る羽生にしても、かなり珍しい。
これが「予定の作戦」だとは。戦型選択権を持つはずの先手番を得た藤井も「想定していたわけではないのですが…類型がある形なので(以降は)それを比較しながら指していました」と揺れる心情を漏らす。タイトル戦無傷の11連覇と、白星街道をばく進中のチャンピオンを惑わせるには十分だった。
一手損角換わりは、羽生世代のライバルで名人経験のある丸山忠久九段(52)や元竜王の糸谷哲郎八段(34)らが得意とする戦法。その丸山は20年7月の竜王戦決勝トーナメントで同じ作戦を取り、藤井に快勝している。羽生の構想にこの事実が大きな影響を与えたのは想像に難くない。
それでも相手は自らの記録をことごとく塗り替えつつある史上最年少5冠。工夫の立ち上がりこそ成立させたが、リードを奪うほど甘くはない。形勢はほとんど互角。指し掛け直後は「一手一手難しいところが続いている。ちょっと誤ればバランスが崩れてしまう。緊迫した状態が続いていると思います」と置かれた状況を冷静に解析した。37手だった午前中の進行に対し、午後は101分かけた封じ手を含めてもたったの7手。迫力ある長考の応酬は、ドリームマッチの興奮を一層引き立たせる。
午後6時、封じ手セット一式を持って控室に消えた羽生が2分後、慌てて対局室に戻ってきた。封をするスティックのりがないという。記録係から「お渡ししました」と告げられ、バツが悪そうにまた控室へ。「その辺に転がってました」と苦笑いを浮かべる。何しろ2年ぶりのタイトル戦だ。盤外でバタバタと落ち着かないのも想定内だろうか。 (我満 晴朗)
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