大人の藤井王将 “いぶし銀”5八銀 封じ手直前43手目「陣形考えた」斬り合いより堅実な受け選択
2023年01月09日 05:00
芸能
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地元・愛知県瀬戸市ではこの日「二十歳を祝う会」が行われていたが、藤井がいたのは式場ではなく掛川の対局場。学生服姿での中学生デビュー戦から7年。和服を着こなし、大人の雰囲気が漂う。
その藤井の指し手が、43手目▲5八銀だった。39手目に1時間16分、41手目に1時間10分。読み筋通りなら小考でいい。読み筋通りでないから連続長考となった、その直後。「どういう方針でやるか難しかった。少し受けに回って、陣形をどうまとめるか考えた」と柔軟に軌道修正した。
解説の神谷広志八段(61)は▲5八銀を「堅実な受け」と表現。予想の本線は、5七の地点を守りつつ羽生陣をにらむ▲3五角だったという。
その後、△3七歩▲2四歩△1五角▲2七飛△2四角▲同角△同歩▲3六角△3八歩成と攻め合えば、もう終盤だ。絶対の自信を抱くはずの斬り合いをひとまず回避し、一度腰を落とす選択。勝利への道筋が見えたら迷わない踏み込みも魅力だが、見えないなら確実にポイントを重ねる慎重さも備えてきた。1時間超えの連続長考を重ねたわりに、羽生より1時間17分多く残し、タイムマネジメントの成長も示した。
16年のデビュー以来、公式戦3連敗がまだない藤井が、タイトル戦第1局では4連敗の危機にある。
昨年棋聖戦以降、王位戦、竜王戦でも敗れた鬼門。第2局以降、全て巻き返したからこそのタイトル戦敗退なしの11連覇だが「要因が分かれば対策します」と苦笑い。「分からないので意識せず、普段通り臨むのがいいのかなと思います」と前向きに捉えた。
挑戦者だった昨年は対局場に入ってすぐの控室を用意された。王将になった今年は奥の和室。「静かで快適です」。羽生相手に王将気分を味わい、「ここからいろいろな展開がある。(羽生の指し手に)対応できるように備えたい」と2日目を見据えた。これまで直面することの少なかった連敗ストップをかなえにいく。 (筒崎 嘉一)
≪封じ手は?≫
▼立会人久保利明九段 [後]5八同成銀。交換するのが自然な流れ。
▼副立会人神谷広志八段 [後]7六歩。5八の銀を取る前に、後の展開のため一工夫したい。
▼記録係中沢良輔三段 [後]5五角。相手の香車を狙いつつ、馬づくりを見据えた一手。