桂跳ねて…藤井王将の安定感抜群のスクラム 秀逸▲6五桂の切り返し

2023年01月10日 05:20

芸能

桂跳ねて…藤井王将の安定感抜群のスクラム 秀逸▲6五桂の切り返し
A図 Photo By スポニチ
 【第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局第2日 ( 2023年1月9日    静岡県掛川市 掛川城二の丸茶室 )】 【関口武史・明暗この一手】1日目午後から続くスローペースな差し手争いは、封じ手を挟んで2日目の午前も繰り広げられた。変則的ながら一歩の犠牲で一手稼いだ藤井の構想が非凡で、▲5八同金の局面は先手陣が引き締まった。封じ手を挟み一晩考えて羽生が託した一手は、できたばかりのスペースに伏兵を忍ばせる△3七歩。3筋の制空権確保が狙いで先手に無言の圧力をかける。
 濃密な中盤戦が続くかと思われた最中、44分の長考で藤井は▲4三銀と踏み込む。強烈な銀捨てで戦局は一気に終盤戦へと移り、先手は飛車と金桂の2枚替えの戦果を収め昼食休憩に入った。午後は7四のスペースを巡る駆け引きが行われ、先手の狙い筋の7四桂が実現するかどうかが焦点となった。

 この折衝で後れを取った後手は△5五角から根元の桂馬を食いちぎり、△4六桂と先手王に迫る非常手段で戦況の挽回を図ったが、この瞬間に跳ねた▲6五桂(A図)の切り返しが秀逸だった。一見△5八桂成と金を取られる手が嫌に映るが▲同王△2八飛▲6七王と上部へ逃げる形が安定している。桂跳ねに代えて▲6七金右だと△2八飛▲7九王と下段に追われる形は紛れる。含みを残して羽生も△6四銀と逃げたが、時間差で金を逃げた▲6七金右が素晴らしい手順だった。

 以下△2八飛▲7七王と上がり安定感抜群のスクラムを築き藤井が押し切った。囲いの概念にとらわれず金銀で構築した上部の厚みを重視した柔軟な構想が貴重な先勝を手繰り寄せた。(スポニチ本紙観戦記者)
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