羽生九段 藤井王将に快勝!1勝1敗のタイに 絶体絶命から4六歩で脱出 王将戦7番勝負第2局
2023年01月23日 05:30
芸能
気分上々なのは当然だろう。タイトル戦勝利は20年10月22、23日の竜王戦以来、約2年3カ月ぶり。しかも無双の王者・藤井に一瞬たりとも押し込まれることなく、考慮時間を1時間2分残しての完勝なのだから。
シリーズ最初の先手番で相掛かりを選び、第1日にはファンも関係者ものけぞって驚く▲8二金を披露する。「あの場面はゆっくりしていると攻めが切れる。筋の悪い手ですが、しようがないと思って指しました」という言葉とは裏腹に、AI推奨の一手を軽やかに実現するあたり、さすがレジェンド。
藤井から猛攻を受け続けた最終盤はさらに、しびれる手順を見せた。左から馬と飛車、右から角がにらみつける挟撃態勢を甘受して絶体絶命になった場面の79手目▲4六歩=第1図。右辺への脱出口を開いて細長い逃げ道をがっちり確保した。「銀とか使って受ければ(以降)長い勝負になってしまう。ちょっと分が悪そうなので歩を突いて勝負しました」――実はその銀を6九に受けると大逆転される筋が生じていたというのだから恐ろしい。巧妙にワナを仕掛けたはずの藤井は、この一手を見てガクッと頭を下げた。
この時点でほぼ勝負はついていた。10手連続王手を浴びての逃避行も、絶対に捕まらないという確信を背景に、手つきには一切の迷いがない。小刻みに何度もうなずき、最後は駒を運ぶ右手がブルブルと振動していた。「最後も怖かったんですけど、何かあったらしようがないと。(自王が)詰まなくてよかったなという感じ」と終局場面を顧みた。
平成の天才は令和の天才に分が悪い。過去の藤井戦は1勝8敗。王将戦第1局で秘策の一手損角換わりをぶつけながらも敗れ、なんと4連敗中だった。蛇ににらまれたカエルいやハブ。知らぬ間に苦手意識を植え付けられていたものの、2勝目はタイトル戦の大舞台でゲットして「ちょっとホッとしています」と率直な心境も漏らす。
主導権は終始握っていた。ゲームプランを着実に実行しての大きな1勝だ。「第3局もいい将棋が指せるよう、自分なりにしっかり調整して臨みたい」。50歳以上でのタイトル戦挑戦は史上4人目で、52歳3カ月での白星。節目のタイトル100期まであと3勝に迫った。23日には恒例の「勝者の記念撮影」に臨む。7年前は対局場の島根県安来市の“名物”どじょうすくい踊りに挑戦した。今回はどんな姿を見せるのか。我らが羽生善治が王将戦に帰ってきた。 (我満 晴朗)