羽生九段 大山王将に師匠が敗れた地…54年越し石川の“雪辱” 銀世界金沢で金色の輝きを
2023年01月28日 05:05
芸能
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1970年(昭45)2月19、20日の第19期第4局。大山康晴王将VS二上達也八段(ともに故人)の好カードは同県加賀市山中温泉の「よしのや依緑園」で開催された。先手の大山は向かい飛車を採用。対する二上は二枚銀で迎え撃ったが、143手の激闘は大山に凱歌が上がった。敗れた二上は、言わずと知れた羽生の師匠でもある。
「そういえば昔の王将戦やタイトル戦は移動が大変で、1日前ではなく2日前から移動していたと師匠から聞きました。それが山中温泉だったかどうかは聞くことができませんでしたが」
自身が生まれる半年以上前の出来事なのに興味津々。対局室の大窓から降り続く雪を観賞しながら、羽生は一瞬の遠い目だ。
1勝1敗で終えた序盤戦は「連敗スタートにならなくて良かった」とやや自虐的に振り返る。第1局は秘策「一手損角換わり」を披露しながら終盤に力負け。だが第2局は相掛かりを選び、衝撃の「8二金」を放って若き王者を苦しめた。それから、わずか1週間。「間隔が結構短いので、すぐに次の対局が来たなあという感じ」と言いながらも「時間的には限られていますが、その中で自分なりに一生懸命やってきたつもりです」と控えめな自信ものぞかせた。
その第3局。再び後手番となるため「なかなか自分の方から主導権を取るのは難しい」と推量する。とは言いながら、第1局はその後手番で持ち味を十分に発揮した。タイトル99期を背景にした引き出しにはアイデアがぎっしり詰まっている。「白熱した対局がつくれるようやっていきたい」と締めた羽生は対局場から出ると取材本部をふらりと訪問。「あ~、こんな感じなんですね」と、なんだか楽しそうだ。初の金沢対局を前に、いつもの羽生がそこにいた。 (我満 晴朗)