後手番の羽生九段がどのような戦術選ぶか 1勝し余裕出たはず 谷川17世名人が王将戦「金沢の陣」展望
2023年01月28日 05:22
芸能
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そして羽生が再び後手になる第3局。「1勝1敗になって余裕が生まれ、作戦の幅が広がる。羽生さんが後手番で何をやるか、同じ後手番の第1局とは違う気がする。となれば全局違う可能性もあり得ます」。それが当代随一の経験値を生かす道でもあるのだろう。
立会人を務めた21、22日の第2局。印象的な一手として羽生が勝ちを読み切った81手目▲6九銀(A図)を挙げた。
1一竜に背後を脅かされる藤井は攻めに活路を見いだすしかなく、羽生陣は馬、飛車、角の大駒3枚に迫られた。▲6九銀で大駒3枚が全て銀3枚の当たりになる。ただし、これで自王が詰まないか、多岐にわたる変化を読み比べなければならない。
藤井はその後10手連続王手を繰り出すが、2筋へ逃した羽生王を捕まえきれず投了した。「羽生さんは20代と変わらない終盤の正確さを見せた。王将戦を盛り上げられるかは、自分にかかっているとの意識があると思う。その意味で、1勝を返せて第5局の実施が決まり、ホッとしていると思う」と推し量った。
盤そばで見守った感想戦。「驚きました」と告白したのは、A図の7手前、74手目△7七銀で両者が検討を打ち切ったからだ。
まだ2日目午後、昼食休憩明けの最初の一手の局面。終局は101手でその27手後だ。形勢もわずかに羽生へ傾いた直後だけに、「一手誤れば普通に逆転しておかしくない。でもお二人がきっちり読み切って、結果は織り込み済みだった」。指し手だけではない。初の黄金対決で立会人を務め、「波長が合っている」と感じた場面が多々あった。
「初日の朝も2日目も、挑戦者の羽生さんが入室してその1分後に藤井さんが入る。開始前の一礼も深々とお辞儀をして、駒をゆったり並べた。様式美を感じた」
和装に和室での対局。指すときは正座。32歳年長の羽生が藤井に語りかける言葉は丁寧で、「藤井さんの強さへの敬意を感じた」。感想戦の終盤では、駒を動かさずに口頭で手順を進め、一局を見守った谷川でも局面に追い付くのが大変なほど「2人だけの世界になった」そうだ。
日本将棋連盟の事業概要の一つ「伝統文化の向上発展に寄与する」にかなう、立ち居振る舞い。対局内容同様、引き継がれる様式美を頼もしく感じていた。 (構成・筒崎 嘉一)