羽生九段“幻惑”雁木囲い リスク覚悟の選択…再びの「隠し玉」で藤井王将揺さぶる 両者互角で中盤戦へ
2023年01月29日 05:00
芸能
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「序盤からかなり激しい局面になり、あの順をやらざるを得なかったんです」とスタート場面を回顧した羽生だが、そのコメントとは対照的に、一手一手の手つきには自信がみなぎっている。
開局早々の4手目△4四歩で、藤井から投げかけられた角換わりを拒否。同時に振り飛車の含みを残す。藤井戦で飛車を振るとすれば20年7月4日の銀河戦本戦以来だ。緊迫の対局場。疑心暗鬼気味となった藤井の心中を見透かしたかのように、しばし態度を保留し、ようやく戦型を明らかにしたのがこの14手目だった。なんともしたたかな進行だ。
振り駒で後手番となった第1局(8、9日=静岡県掛川市)では「一手損角換わり」をちゅうちょなく選択。白星にこそ結びつかなかったものの、藤井にたっぷりと汗をかかせた。第2局(21、22日=大阪府高槻市)では先手の利を生かし、持ち時間をふんだんに余しての会心譜。再び後手番となった今局も「隠し玉」を用意していた。
懐の深すぎる永世7冠は、二度三度とうなずいてから3局連続の封じ手を選ぶ。「お互いに手の広い局面が続いて、なかなか先の見通しがつかない。未知の世界を手探りで指している段階です」と心境を明かしながらも、表情に極端な険しさはない。
形勢としては、ほぼバランスを保ったまま指し掛けた。「なかなかちょっと、どういうことになるのか予想できませんねえ」と第2日を展望した羽生は、むしろ難解なねじり合いを楽しんでいる気配だ。封じ手直前には相手に角の打ち込むスペース、いわゆる「キズ」を差し出す驚きの一手も見せている。豊富な経験に裏打ちされた変幻自在の指し回し。持ち味を存分に発揮して、王者にまたも大汗をかかせた前半が終わった。 (我満 晴朗)