羽生九段、完敗 「実験」雁木囲い崩された 「未解決の部分」試すも「まとめ方に問題」
2023年01月30日 05:29
芸能
後手番ながら振り飛車の可能性をちらつかせ、藤井に圧をかけた序盤戦。雁木(がんぎ)囲いに進んだのは「未解決の部分があるので」という理由からだ。2年ぶりのタイトル戦で古色蒼然(そうぜん)たる戦型を「実験」する大胆さ。固定観念にとらわれず、常に新鮮な刺激を追い求める羽生らしい進行は、一見プランどおりに見えたものの「まとめ方に問題がありましたね」と実情を明かす。
前述の封じ手以降は確かに形勢を徐々に損ねた。藤井に角成りを容認する代償に、自王を金銀2枚ずつに囲まれた4四へと待避させる。「ちょっと(相手の)攻撃を緩和する意図だったんですが、なかなか遠回りし切らなかったと」。受けに回っているだけではらちが明かないとばかりに、昼食休憩後の64手目△8六歩(第2図)から猛攻に転じる。藤井が1ミリでも受け損なったら逆転もあり得る状況をつくり続けた。しかし、ここも冷静に切り返されて反撃の芽を摘まれ、結果として藤井の背中は遠くなるばかり。投了後の羽生は気持ちいいほど割り切っていた。
感想戦では54手目の3三王に代えて4三王を提示され、駒を空打ちしながら「こっちの人(王)?う~ん、(勝負の分かれ目は)ここだったんですか?」と驚きの声を上げながらも「そういうことか…」と、自分なりの咀嚼(そしゃく)を試みる。その眼光の鋭さには一点のよどみもなかった。
トライアンドエラーを繰り返しての黒星ではあるが、後手での結果にダメージは少ないはず。「気持ちを切り替えて次の対局に臨みたい」。立川対局では楽しみな先手番が待っている。(我満 晴朗)