「探偵ロマンス」お百の魅力 世古口凌「一歩引くことの美しさ」
2023年02月05日 09:30
芸能
お百はオペラ館の舞台でヒロインを務める踊り子。男性でも女性でもない極めて難度の高い役柄だ。
世古口は「まず『美しい踊り子』という設定があった。見た目が美しくないと話にならないと思い、常に体形維持を考えていた。脂っこいものは食べないようにして、好きなラーメンやハンバーガーも控え、野菜中心にした。ソフトドリンクも飲み過ぎないようにして、ランニングをしたりトレーニングに行ったりした」と明かす。
お百らしく話したり動いたりするため事前の準備も必要だった。
世古口は「普段の生活の中で、女性の話し方やしぐさを研究して、それを取り入れた。座り方、歩き方が難しかった。男性と女性は骨格が違うので、女性の歩き方は男性と全く違う。お百はヒールを履くので、初めてヒールを履いたけれど、女性は大変なんだ…としみじみ感じた」と振り返る。
出演に当たってジェンダー指導も受けた。
世古口は「先生にいろいろ聞いた。Xジェンダーというものがあって、その中にもいろいろ種類がある。そこが難しいと思った。どんどん枝分かれしていくので、お百はどこに行き着くかと考えたら、これも違う、あれも違うとなった。考えるのが好きなので、とことん考えようと思ったけれど、結局、分からなかった。お百の心、お百の生き方を演じていくしかないと思った」と説明する。
お百は「蠱惑(こわく)的な魅力」を持つ人物。推理小説家にあこがれる主人公・平井太郎(濱田岳)や上海帰りの貿易商・住良木平吉(尾上菊之助)らとのやりとりに妖しさが漂う。
世古口は「人と対面した時、一歩引いて、相手のことを少し探ってから話す。そこが蠱惑的に見えていたら、うれしい」と話す。
見どころになるのが、舞台で舞う場面だ。ダンス指導は、ドラマ出演もしている牧勢海。演出の安達もじり氏は「牧勢さんの振り付けは基本的に感情の動きを表現するものなので、劇中劇の中の感情とお百自身の感情を同時に表現しないといけなかった。高度なことをやってもらったが、編集している時に『なんて美しいのだろう』とほれぼれする感じだった」と話す。
世古口は「舞も初めてだったので、大変だった。牧勢さんに、まず立ち方から直してもらった。1週間くらい練習したけれど、時間がなくて焦った。ヒールを履くと、思ったように足が動かなくて、滑ってこけたりもした。いろいろな人の助けがあってできた。第2話では見せる気持ち、正面から見て美しい感じを表現し、第3話ではお百の気持ちの揺れを体で表現した」と明かす。
お百の物語は第3話でピリオドが打たれたように見えたが、制作統括の櫻井賢氏によると、作者の坪田文さんは「ドラマの続編を作るなら、お百を出したい」と話しているという。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。