羽生九段が最先端の戦術で勝負懸けるか 偶数局の勝敗重要 谷川17世名人が王将戦「立川対局」展望
2023年02月09日 05:14
芸能
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前回羽生が先手だった第2局は、自ら誘導した相掛かりから20代の全盛期と変わらない終盤の正確さを発揮した。馬、飛車、角の大駒3枚に迫られた羽生陣。駒台から銀を自陣に打ち付けて、銀3枚が全て大駒3枚に当たる複雑な変化を読み切った。「ここまで3局、戦型選択における羽生さんの工夫が印象的でした。この流れで行くのか、最先端で行くのかに注目します」と語った。
昨年12月に行われた準公式戦「サントリー将棋オールスター東西対抗戦2022」。羽生は永瀬王座とコンビを組み、豊島将之九段(32)と組んだ藤井と対戦した。戦型は最新型の角換わり腰掛け銀。年下との早指し戦でも最善手を指し続ける姿に行き届いた研究量を確認し、「最先端の戦いを挑む可能性はある」と見立てていた。
第3局から中10日での第4局となった。谷川は藤井と、第3局の決着翌日、都内での竜王就位式で再会し、謝辞の完璧さに驚いた。
「近年、タイトル戦で多くなった協賛社名もスラスラとそらんじて、第一人者の風格が増しました」。また記念扇子に揮毫(きごう)した「千思万考」に「考えることが好きで、新たな局面に出合えることが楽しい。藤井さんらしい選択だと思いました」。その充実ぶりを垣間見た思いだったという。
今シリーズ初めて「藤井さんの完勝だった」と振り返る第3局。羽生が挑んだ雁木(がんぎ)の戦いは、藤井にとって公式戦での採用例が少ない。加えて羽生が14手目で飛先の歩を突いて居飛車を明示するまで、振り飛車の可能性もあった。
「序盤から大きな長考をすることもなく、積極的に指した。王をガッチリ囲うよりも3筋からの攻めを急ぐのが最善と、雁木に対する考えが整備されていると感じました」
その中で「決め手に近い」と評価したのが59手目▲3七歩(第1図)。「羽生さんが(58手目)△4四王と上がって、上部で頑張ろうと思っていたところ。精神的ショックは大きかったでしょう」。60手目以降△3七同歩成、▲4五歩に△3三王と羽生王は無念の退却を迫られる。▲3七歩に費やした考慮はわずか2分。藤井の読み筋の深さに改めて感心していた。 (構成・筒崎 嘉一)