【第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第4局第1日 ( 2023年2月9日 東京都立川市「SORANO HOTEL」 )】
【関口武史・第1日のポイント】藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=の2勝1敗で折り返しの4局目、毎局戦型選択にアレンジを見せる羽生善治九段(52)が選んだのは角換わり。初日の進行の早さ、藤井の得意分野、羽生にとって不安要素も多い戦型選択だ。前日森内立会人が「藤井王将に4勝するためには避けては通れない戦法」と戦型予想したが、羽生も思いは同じだったということだろう。藤井の最も得意な舞台で羽生がどのように主張するのか注目された。
藤井の待機作戦を前に、千日手の気配が漂ったが▲7八王と羽生が新構想を打ち出した。戦場に近づく大胆な一手に藤井も△6五歩と仕掛ける。一見先手番の主導権を手放したようだが右桂を活用した後、▲6五同銀(A図)と駒損覚悟で食いちぎったのが羽生の構想だった。先攻を呼び込み相手の力を利用して▲6三歩~▲6四桂~▲7三角と藤井陣を押し込んでいく。
本局の進行は「後の先」を思わせる展開で、気が付けば羽生が主導権を握っている。羽生が披露した工夫の7八王・6八金型、今後の展開は未知数だ。 (スポニチ本紙観戦記者)