防衛は甘くないぞ~羽生九段タイ勝!藤井王将の封じ手ミス逃さず タイトル通算100期へあと2勝
2023年02月11日 05:20
芸能
対局開始時から降り続く雪はやむことなく、立川の地を銀世界へと変えていく。積もる雪のかさ高と正比例するように、羽生は順調にリードを広げていった。相手の得意戦法にあえて挑む、角換わり腰掛け銀でスタートした第1日(9日)に見せた▲7八王。「確か豊島(将之九段)さんの対局であった手。それを土台にしたんです」と種を明かす。1年前の2月4日に行われたA級順位戦。斎藤慎太郎八段が豊島相手に組んだ異型とも言うべき陣形を、羽生の頭脳はしっかり覚えていた。結果は151手で斎藤の勝利。「大熱戦だったんですよね」。以来、温めていたスペシャルプレーを、ここで角換わり大好きの藤井にぶつける勇気が開花した。
第2日午前9時に開封された藤井の封じ手△5二同王は、明らかな緩手だった。この時点で銀桂交換の駒損状態でもあり「ゆっくりしていられない」と決意した羽生は、ひたすらパンチを繰り出した。「攻めがつながるか、それとも切れるのか」。ギリギリの線で主導権を握り続け、73手目に満を持して3一に角を放つ=第1図。「まだまだ難しい展開だと思っていた」と顧みるものの、ここで藤井が74手目を指すまで74分を消費させた。AIに限りなく近づきつつある最年少5冠の頭脳を混乱させた必殺芸。「(応手の)6二銀は予想してなかったので驚きました」と明かしながらも、以降は付け入る隙すら一切与えぬ手順を踏んで、即詰みに討ち取った。藤井相手の7番勝負で2勝2敗と拮抗(きっこう)したのは羽生が初めてだ。
「第5局までは間隔が空く。それまでに調整し、皆さんに楽しんでもらえる将棋を指せるよう頑張りたいです、はい」
今シリーズ2度目となる終局後の記念写真は、バレンタインデーにちなみショコラティエに扮した。「かっこいい制服ですね」とご機嫌のレジェンドは、節目のタイトル獲得通算100期までマジック2と迫った。歴史的瞬間へのカウントダウンが始まった。(我満 晴朗)