「舞いあがれ!」史子の役割 NHK制作統括「八木莉可子さんが説得力を持たせた」
2023年02月17日 08:30
芸能
制作統括の熊野律時チーフプロデューサーは「舞と貴司の関係はそれぞれが自分の気持ちに向き合うきっかけがないと進展しない。どういうきっかけが考えられるかと脚本の桑原亮子さんと話した時、貴司の短歌に引きつけられた女性・史子と、貴司にもう一歩踏み込んだ短歌作りを求める編集者・リュー北條(川島潤哉)が登場するという話になった。2人には、舞と貴司が押さえ込んでいた思いを表に出すきっかけになる大事な役割があった」と説明する。
史子は自分の短歌を認めてくれた貴司に対して強い気持ちを抱いており、第95回で貴司に「私、先生のともしびになりたいです」と思いを告げていた。
熊野氏は「舞、貴司、史子は俗な意味での三角関係とは違う。史子はある種、舞と貴司の間に割り込んできた人だが、彼女自身に切実な思いがあり、生きづらさを抱える中で短歌に自分の思いを表してきた。貴司と出会い、自分の短歌を肯定してもらったことをとても喜んでいる。そういう繊細な人物、驚くほどピュアな人物を八木さんが説得力を持つ形で演じてくれて、すがすがしい感じを生みつつ、舞と貴司の関係を変えるきっかけになる役割を果たしてくれた」と話す。
史子が貴司に対する自分の思いを抑えつつ、舞に「梅津先生に、ほんまの気持ちを聞きに行ったらどうですか」と涙ながらに進言し、舞が感極まる場面は深い余韻を残した。
熊野氏は「八木さんはこのドラマには途中参加だったが、『福原さんが明るく優しく接してくれたので、やりやすかった』とおっしゃっていた。舞と史子の関係性をスムーズに作って撮影に入った様子だった」と成功の一因を明かす。
そして、史子らとともに大きな役割を果たしたのが短歌の存在だった。舞は「…千億の星…」をはじめ、貴司が折々に贈ってくれていた短歌の数々を思い起こすことで、自身の行動を決めた。
熊野氏は「私も『…千億の星…』にそういう意味があることをこの週の台本で初めて知った。短歌は31文字という少ない言葉の中に、作者が感じたことが凝縮されている。それを物語にどう組み込んでいくかだが、短歌に造詣が深い桑原さんにしか作れない世界観だと思う」と語った。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。