しなやかで強い 「the band apart」25周年野外フェスへの軌跡

2023年04月08日 05:05

芸能

しなやかで強い 「the band apart」25周年野外フェスへの軌跡
結成25周年を迎える「the band apart」 Photo By 提供写真
 今年結成25周年を迎えるロックバンド「the band apart」が15、16日に東京・板橋の荒川河川敷で音楽フェス「ITa FES “the band apart 25th anniversary”」を開催する。中学、高校時代に知り合った4人が一度もメンバーチェンジをすることなく、四半世紀にわたって活動してきた稀有なバンドは、自らを「宝くじに当たった以上に幸運」と言ってはばからない。結成から「何が変わったわけではない」(ドラム・木暮栄一)というが、その軌跡を見つめると「しなやかに」進化している姿がそこにはある。
 「こんなところでできたらいいなぁ」。川崎亘一(ギター)が、漠然と描いていた夢が現実になろうとしている。

 「いつか、絶対に、というより、中学や高校のころ、河川敷の土手に座って、なんとなく思っていた。そういう意味では夢だったのかもしれない」と川崎。名前のある大ホールでもなければ、大々的なツアーを行うのでもない。音楽を始めたころの「原点」にバンアパは戻ってくる。

 少年の空想だけが原点に戻る道筋になったわけではない。図らずも不可抗力の事態がここに至る1つの伏線となっている。

 2011年3月の東日本大震災。想像だにしなかった被害の大きさ、被災地の惨状は、音楽どころではない、という状況だった。それでも4人は「できること」を探った。

 岩手県大船渡市での野外ライブ。きっかけは知り合いがいたことだったが、東京から可能な限りの支援をしながら、本番のステージまで、地元のチームと共に協力しながら辿り着いた。楽ではなかった分、これがバンドとして大きな糧になった。川崎は「この経験がなければ、今回のフェスにはたどり着かなかった」と実感している。

 無関係なようでも時代とともにバンドは進んできた。しかし、流行に沿ってきたわけではない。「時代はTikTok。やった方がいいですよ、と勧めてくれる後輩バンドもいる」と木暮は笑う。自分たちが納得できる形で音楽を紡ぎ出し、ファンへどう届けるか。その手段として新しい形が必要なら、気負わずそうするが、今は別に…。逆に必要ならば動きは素早い。コロナ禍ではいち早く配信ライブを手掛けた。

 25周年のフェスは対外的に見れば「節目」となるが、4人に特別な意気込みは、ない。これまでの活動の1コマであり、この先も続くバンドの通過点、といったスタンスだ(もちろん開催にあたっての役所との折衝や安全、コロナ対策などの裏方業務はしっかりやっている)。

 「先のことはあまり考えていない」。木暮は真顔でそう話すが、この自然体のスタンスが「the band apart」なのである。ファン歴が長い人が多いのもバンアパを語るうえで外せないことだが、この自然体に心地よさを感じるのだろう。

 自然体でいられるのは難しい。嫌でも変わらざるを得ないことに直面することが生きていれば多々あるからだ。バンアパが自然体でいられるのは、時代や状況の分岐点に立たされた時でも、裏方を含めたバンドが「しなやかに」に対応できる力量と瞬発力が備わっているから。その時に直面したら、慌てず必要なアクションをするだけでよい。

 25年間「ラッキー」だっただけではない。口には出せない「いろいろなこと」を表に出ない(出さない)ところに「しなやかさ」と同居する「強さ」を感じる。25周年は通過点。バンアパの進化は続く。

▼the band apart 1998年(平成10年)、荒井岳史(ボーカル、ギター)、川崎亘一(ギター)、木暮栄一(ドラム)の3人で結成。後に原昌和(ベース)が加入。バンド名は米国の映画監督、クエンティン・タランティーノ氏の映画プロダクション「A Band Apart」に由来。01年10月にデビューシングル「FOOL PROOF」を出し、05年のアルバム「quake and brook」はオリコンチャート最高5位に。18年9月に結成20周年を記念したベストアルバム「20 years」などを発表。22年7月に9枚目のアルバム「Ninja of Four」をリリースした。
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