伊東蒼 11年ぶりの大河「どうする家康」で侍女役 「目線に感情を生かせた」

2023年04月15日 13:50

芸能

伊東蒼 11年ぶりの大河「どうする家康」で侍女役 「目線に感情を生かせた」
大河ドラマ「どうする家康」で阿月を演じる伊東蒼(C)NHK Photo By 提供写真
 【牧 元一の孤人焦点】俳優の伊東蒼(17)がNHK大河ドラマ「どうする家康」で、お市(北川景子)に仕える侍女・阿月を演じた。伊東は2021年の連続テレビ小説「おかえりモネ」で朝ドラ初出演し、注目された。2012年の「平清盛」以来、11年ぶりとなる大河の撮影に臨んだ思いを聞いた。
 ──11年ぶりの大河の現場はどうでしたか?

 「背筋が伸びる思いがしました。お着物を着てセットの中に一歩足を踏み入れると、自分が日々生活している環境とは全く違います。お芝居をする時、その時代に適した動きをしないと悪目立ちしてしまうので、常に緊張感がありました」

 ──子役として11年前に出演した「平清盛」で覚えていることは?

 「松山ケンイチさん(平清盛役)が緊張している私を見てグミをくださいました。もったいなくて食べられなくて、高校1年の時に大阪から東京に引っ越すまで、ずっと大事に冷蔵庫に保管していました。お芝居としては、一堂に会したみなさんの後ろの方にいたシーンしか覚えていません」

 ──11年前と今回ではどちらが緊張しましたか?

 「今回の方が何倍も緊張しました」

 ──演じた阿月はどんな人物ですか?

 「台本を読んで、一貫して芯の強さがある人だと思いました。父親に売られてどん底の時にお市さまと出会い、お市さまのために一生懸命に働きます」

 ──どのように演じましたか?

 「真っすぐさ、芯の強さを忘れないようにしてお芝居をしました。阿月は元々は活発な女の子なのですが、幼い頃と侍女になってからは変化がないといけないので、幼い頃は自分の気持ちを前面に出すこと、侍女になってからは一歩引いてお市さまを立てることを意識しました」

 ──初共演した北川景子さんの印象は?

 「全ての動作が美しくて、見とれてしまいました。カメラが回っていない時でも、お市さまの雰囲気があって、見ていて言葉も出ない感じがしました。一緒の撮影の時はたくさん声をかけてくださって、全ての言葉が温かくてうれしかったです。出身が同じ関西なので、撮影の合間に関西の話をしました」

 ──お市が阿月の口に金平糖を入れるシーンが印象的です。

 「北川さんが『どうやって入れるのがいいんだろう。突然、口の中に金平糖を入れられたら怖いよね?』とおっしゃって、相談しながら撮影しました。リハーサルの時、フェースシールドをしていて、やりにくいと思っていたら、松本潤さん(徳川家康役)が『外していいよ』と言ってくださったので、外してリハーサルができました」

 ──初共演の松本さんの印象は?

 「初めてお会いした時に『テレビで見たことがある方だ!』と思いました。松本さんから先に声をかけてくださって、私がその時に持っていたリュックをほめてもらいました。撮影で会うたびに声をかけてくださって、緊張がほぐれてリラックスして撮影することができました。印象に残っている場面で、阿月が家康さまの腕を思わずつかむのですが、家康さまはその時、阿月の手を握り返してくださって、温かさを感じ、『(物語の中でのある努力が)報われて良かったね、阿月』と思いました。実際には呼べなかったのですが、心の中ではずっと『殿』と呼んでいました」

 ──初めての朝ドラ「おかえりモネ」から約1年半たちました。ここまでの道のりはどうでしたか?

 「いろいろな役をやらせていただいて、あれができたのだから大丈夫だと思える材料が増え、ポジティブになりました」

 ──朝ドラ出演は反響がありましたか?

 「友だちのお母さんから『朝ドラ見たよ』と言ってもらえることが多かったです。大阪にいた時の学校の先生からも連絡をいただいてうれしかったです」

 ──以前の取材で、朝ドラ出演で勉強になったこととして「その場で感じることが大事だと思った」とおっしゃっていました。今回の大河で、自分が感じたことを生かせたシーンはありますか?

 「阿月の目線に、その時の感情を生かせたかもしれません。所作の先生からは、阿月は侍女なので、お市さまと話す時に目を見てはいけないと言われていました。私は普段、人の目を見て話しているし、お芝居でセリフを言う時も目を見るので、どこを見て話せばいいのだろうかと考えました。阿月の感情が動いた時にどうしたらいいのか…。お市さまにどうしても伝えたいことがある時にどうしたらいいのか…。基本的にお市さまの目を見ないで話しましたが、ここは見てしまおうと思って見た場面があります。目線を合わせていない場面に阿月が感情を抑えて一歩引いている感じ、目線を合わせている場面に本来の阿月が出ている感じが表れていたらうれしいです」

 ──今回の大河で勉強になったことは?

 「北川さんに凜とした空気を感じました。北川さんがそこにいると空気が変わり、その空気があったからこそ、私は侍女の阿月になりきることができました。セリフの言い方や表情の作り方ももちろん大事ですが、空気を作れる役者さんは格好いいなと思いました。それは経験を重ねないと出せないものなのだろうと思うので、北川さんをまねするのではなく、いつか私にもそういう空気が自然に生まれれば素敵だろうなと思います」

 ──役者としての今後の目標は?

 「ひとつひとつの役を一生懸命に演じていきたいです。今は周りの人たちにたくさん助けてもらっているので、もう少し自分のことをちゃんとできる人になりたいです」

 ──4月から高校3年生で、学業との両立は大変でしょう?

 「お芝居も学校も楽しくやっています。私より、事務所の方や母、周りの人たちの方が大変だと思うので、感謝しています」

 ──今後、挑戦してみたい役は?

 「ホラー・サスペンスをやってみたいです。映画『人狼ゲーム』シリーズが好きで全部見ているので、そういう作品に出てみたいです」

 ──16日放送の「どうする家康」には阿月の重要なシーンがありますが、最後に、伊東さんが演じた阿月という人物の魅力を教えてください。

 「誰かのために一生懸命になる喜び、自分がやりたいことをやる楽しさ、きらめきを感じていただけると思います」

 ◇伊東蒼(いとう・あおい)2005年9月16日生まれ、大阪府出身の17歳。11年、ドラマ「アントキノイノチ~プロローグ~天国への引越し屋」でデビュー。17年の映画初主演作「島々清しゃ」で毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞を受賞。今月公開された映画「世界の終わりから」に主演。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。
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