俳優松本白鸚(80)が半世紀以上主演し続けたミュージカル「ラ・マンチャの男」の「ファイナル公演」が24日、よこすか芸術劇場(神奈川県横須賀市)で閉幕した。満員の約1300人の観客からは会場が割れんばかりのスタンディングオベーションを送られ、共演した次女で女優松たか子からは花束を渡されて労をねぎらわれた白鸚。目を潤ませ、感極まった表情で客席を見渡すと「皆様のおかげで、今日まで来れました」と感謝。26歳から54年演じ続けた作品との別れを告げた後で「これからも命のある限り芝居を続けてまいります」と、生涯現役俳優を誓ってみせた。
セルバンテス「ドンキホーテ」を基にし、1965年に米ブロードウェーで初演された作品。日本での初演が1969年、白鸚(当時は市川染五郎)主演作だった。70年にはブロードウェーの招待を受け、全編英語で演じた。「憎むべき狂気とは、あるがままの人生に折り合いをつけて、あるべき姿のために闘わないことだ」の名ゼリフが多くの人の心をとらえ、上演はこの日で計1324回となった。
昨年2月、東京・日生劇場で「ファイナル公演」が開催されたが、複数の関係者が新型コロナウイルスに感染した影響で予定した25公演のうち18公演が中止。今回は仕切り直しの公演だった。
最後には劇中歌「見果てぬ夢」を出演者全員で歌い、新たな一歩へ、前を見据えた。