藤井王将 最年少7冠王手 早すぎ69手で渡辺名人から3勝目 次戦の長野・藤井荘で決める
2023年05月23日 05:05
芸能
「こちらが受ける展開が続いた。勝ちを見通せるところまでいかなかった」。その実感とは対照的に、60手台での終局は名人戦8年ぶり。15年、当時の羽生善治名人が行方尚史八段に60手で勝利した第73期第1局以来の快勝だった。
朝から守勢に回った2日目。少ない手駒で攻めをつなぐ技術にたけた、渡辺の手駒が尽きるまで受け切った、強気の「王さばき」が光った。
44手目、角が飛び出しての王手に藤井王は左へ逃げた。そこは渡辺が飛車角桂香4枚で突破を図る危険地帯。さらに50手目、王を守護する銀の頭へ打たれた歩を、藤井は銀ではなく王自身で取った。「昼食休憩あたりから困っている感じはあった」。渡辺が苦戦を自覚した昼食休憩は、47手目での突入だった。
2つの最年少記録へ王手をかけた。名人の最年少記録は83年、谷川浩司17世名人(61)が樹立した21歳2カ月。名人初挑戦にして記録更新へラストチャンスの藤井が第5局で奪取すれば4カ月縮める。7冠は唯一、96年に羽生が当時の全タイトル(現在は全8冠)を独占した。25歳4カ月でのことで、第5局で達成すれば4年6カ月短縮する。
加えてタイトル獲得期数もダブル王手で量産態勢に入った。まず叡王戦第4局が中5日の28日、岩手県宮古市である。現在の13期は佐藤康光九段(52)と7位で並び、2期を積み増せば米長邦雄永世棋聖の19期を目指す、次のステージへ移る。
そして相居飛車の力戦型シリーズも佳境に入った。両者の対戦成績はこれで藤井の19勝4敗。角換わりや相掛かりの最新型では分が悪いとみた渡辺が経験値を生かそうと、序盤から前例を離れる読み比べに活路を求めたが、見事はね返している。
第5局の舞台は同名の藤井荘。森鴎外や与謝野鉄幹、晶子夫妻らの文人が通ったという。「またすぐにある。スコアのことは意識せず、いい状態で臨めれば」。まるで計ったかのような舞台装置が整った。