藤井聡太新名人 谷川超え最年少20歳10カ月 完全制覇王手7冠 96年の羽生以来

2023年06月02日 05:30

芸能

藤井聡太新名人 谷川超え最年少20歳10カ月 完全制覇王手7冠 96年の羽生以来
<名人戦第5局 記者会見>記者会見に臨む藤井新名人(撮影・河野 光希) Photo By スポニチ
 【名人戦第5局第2日 ( 2023年6月1日 )】 将棋の第81期名人戦7番勝負(毎日新聞社、朝日新聞社主催)第5局は1日、長野県高山村の緑霞山宿・藤井荘で第2日が指され、後手の藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋王、棋聖含む6冠=が渡辺明名人(39)を94手で破った。シリーズ成績は藤井の4勝1敗となり、名人戦初挑戦で奪取に成功。谷川浩司17世名人(61)の持つ史上最年少名人記録(21歳2カ月=1983年)を40年ぶりに、羽生善治九段(52)の史上最年少7冠記録(25歳4カ月=96年)を27年ぶりに更新する大記録ずくめの勝利となった。
 藤井が藤井荘で伝説になった。将棋界最古の名人位を史上最若年で手中にし「まだ実感はないんですけど…非常にうれしく思っています」とシンプルに心境を表現した。

 得意の角換わりを見送り、雁木(がんぎ)囲いを選択したが、中盤までは「作戦負けかと思った」と明かすほど苦しんだ。自王の囲いは薄く心もとない。だが相手陣をにらむ位置に、攻防の角を2枚利かせる鬼布陣で3連覇中の名人を徐々に追い詰める。「(2枚の角は)勝負手。あれで少し先手王に迫れるかと」。最後は交換した飛車を王手で打ち込み投了を招く。歴史的な一局は1時間24分を残す快勝譜だった。

 今シリーズは羽生を思わせる指し手も出た。後手番の第1局中盤、9筋に垂らした歩がそれだ。膠着(こうちゃく)状態で相手の出方を見透かすような一手パス。将棋は手番側が優先権を持つゲームなのに、その権利を譲る軽業は羽生の十八番。名付けて「羽生の手渡し」。

 藤井は1~3月に行われた第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負第1局で羽生に打たれた46手目[後]3七歩を見て「あの手渡しは印象に残っています」と明かす。「局面局面で相手に少し手を渡す指し方を選ばれる。自分としてはそういった感覚もどんどん取り入れていきたい」。先勝した開幕局で見せた何げない一手は、羽生の流儀を受け継ぐものだった。

 名人は江戸時代から400年以上続く最も歴史がある称号。5歳で将棋を始めた藤井は、6歳で「めいじんになりたい」と願い、小学4年時の文集に「名人をこす」と書き込んだ。幼少時の志は北信濃の山里で華麗に花開いた。

 名人も7冠も最年少記録を塗り替えながら「そのことは意識していない」と繰り返すばかり。むしろ「名人は重みのあるタイトル。それにふさわしい将棋を指さなければ」と表情を引き締めた。

 タイトル戦は出場15シリーズで無敗の15連勝。劇画のような進撃はこれが最終章ではない。現在予選中の王座戦はあと3勝で永瀬拓矢王座(30)への挑戦権を得る。9月開幕予定の5番勝負をものにすれば、前人未到の全8冠制覇が実現する。「少しでも上を目指したい」。約束の地は手の届くところにある。(我満 晴朗)

 ≪8冠へ最短13連勝≫今秋にも達成する可能性がある8冠制覇。条件は(1)5日からベトナムで始まる棋聖戦、7月7日からの王位戦を防衛(2)王座戦5番勝負の挑戦者になりタイトルを奪取――の2つ。最短13連勝で達成となる。棋聖戦、王位戦の挑戦者はいずれも佐々木大地七段(28)。毎年7割近い勝率を残すなど、勢いのある若手棋士。藤井との対戦成績は2勝2敗の五分だ。

 藤井はこれまで5度挑戦し一度も突破できず、“鬼門”とされてきた王座戦の挑戦者決定トーナメントで現在ベスト8まで進出。挑戦者になれば、永瀬拓矢王座との5番勝負が待ち構えている。

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