10月まで猿之助の休演発表 市川中車が“因縁”宙乗り代役 7月「菊宴月白浪」で父・猿翁の代名詞初挑戦

2023年06月04日 05:20

芸能

10月まで猿之助の休演発表 市川中車が“因縁”宙乗り代役 7月「菊宴月白浪」で父・猿翁の代名詞初挑戦
中村壱太郎(右)と夫婦役を演じる市川中車。後方は市川團子(C)松竹 Photo By 提供写真
 東京都目黒区の自宅で倒れた状態で見つかった歌舞伎俳優の市川猿之助(47)が出演予定だった「六月大歌舞伎」(25日まで)が3日、東京・歌舞伎座で初日を迎えた。昼の部「傾城反魂香」では市川中車(57)が主演。猿之助の代役を務めた中村壱太郎(32)と、夫婦愛が生んだ奇跡の物語を演じた。
 「この願いが…叶(かな)わずば…。死にたい、死にたい、死にた~い」。中車の絶叫が歌舞伎座に響いた。「私も一緒にこの世を去りましょう」と壱太郎。願いが叶わず絶望し、夫婦で心中を覚悟する見せ場だ。

 吃音(きつおん)の絵師と献身的な妻の愛を描く感動作。澤瀉屋(おもだかや)を支えてきた猿之助が不在の中、大役を務めた中車。“顔芸”や土下座など、特技を随所に盛り込んだ。「傾城反魂香」は澤瀉屋が得意とする演目。今回は、父市川猿翁(83)が手がけた“猿翁型”と呼ばれる演出での上演。中車は「澤瀉屋としての責任を強く感じます。遠く憧れのお役だと思ってきました」と役への思いを明かした。

 この日、猿之助が7月から10月まで休演することが発表された。出演予定だった7月の歌舞伎座公演「菊宴月白浪」では、中車が代役で主演。父猿翁の代名詞でもあった宙乗りにも初挑戦することになった。かつては親子関係を拒絶され、長く絶縁状態だった。2012年に歌舞伎界入りすることになった際に和解。発表会見で猿翁が放った「恩讐(おんしゅう)の彼方(かなた)に」という言葉が、2人の複雑な歴史を物語っていた。それから11年。思わぬ形で中車は、お家芸を継承することとなった。

 ただ、昨年8月にクラブホステスへの性加害疑惑が報じられて活動休止を余儀なくされ、ようやく歌舞伎俳優として活動が増えてきたばかり。「家の芸はまだまだ。本来なら猿之助さんからもっと稽古をつけてもらう必要があったはず」と語る歌舞伎関係者もいる。

 世間の目はいまだに厳しいが「本人は一門を引っ張っていく覚悟を持っているようです」と澤瀉屋関係者。松竹関係者は、この日の演技を「中車史上、最高」と高評価。

 大役の機会をチャンスに変えることができるか。中車にとっては気の休まらない日々が続く。

 ≪9月京都・南座の冠が消えた≫松竹はこの日、猿之助が7~10月の歌舞伎公演を休演すると発表。8月には歌舞伎座、9月には京都・南座で「新・水滸伝」を予定していた。共に中村隼人(29)が主演を務める。南座では当初「市川猿之助特別公演」の冠がついていたが「九月花形歌舞伎」に変わった。10月に東京・立川ステージガーデンで予定していた公演も休演する。

 松竹は「今なお当局による対応が続いており、さらに、推察される本人の心身の状態に鑑みましても、6月公演に引き続き、その後の出演も困難と判断した」と説明した。

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