「らんまん」高藤役・伊礼彼方 浜辺美波に「ヤバ藤」と呼ばれていた
2023年06月07日 08:15
芸能
「映像作品で芝居したいという思いが数年前からありました。舞台は体全体で表現しなければならず、細かい芝居をやったとしても、それが客席の後ろにまで伝わるかと言えば難しいところがあります。今回は結構試すことができました」
──どんなことを試しましたか?
「例えば、額にシワを寄せたり目をつり上げたり頬の筋肉を少し動かしたりという細かい芝居です。寿恵子さん(浜辺美波)に対する『二度見』は放送後にネットで話題になりましたが、舞台では、そういう動きがなかなか注目されないので、面白さを感じました。ドラマは演出の方がどのような絵を見せたいかということが大事だと思っていたので、その意図を感じ取りつつ、その場で思いつく限りの芝居をしました。できるだけ多く素材を出したいと思いました」
──収録の手応えは?
「テストの映像をモニターで見て、瞬きが多すぎるとか声が大きすぎるとか、その場で修正しながらやりました。映像作品での芝居はほぼ初めてみたいなものなので、手応えのある部分と、改善したい部分があります」
──これまでの舞台での芝居を生かせた部分はありますか?
「立ち姿は結構生かせたと思います。ダンスシーンも、舞台をやっていなかったら、なかなか地に足の着いた表現ができなかったと思います。僕は普段から貴族役や女たらしの役など、女性とスキンシップする役が多いので、女性の手を取るしぐさは自然に見えるんじゃないでしょうか」
──浜辺美波さんとの共演はいかがでしたか?
「最初は、とてもシャイな方だという印象でした。何か話しかけてもマネジャーさん経由で答えが返ってくるというような雰囲気があって僕も距離を測りながら接していましたが、最終的にはとてもよく話してくれるようになりました。たぶん、シャイというより、ダンスシーンへの重圧で口数が減っていただけなのだと思います。最終的には僕は『ヤバ藤』と呼ばれていました(笑)。『寿恵子から見て高藤はヤバい』みたいなことをおっしゃっていて、とてもかわいらしくオープンな方だと感じました」
──神木さんとは共演シーンは少ないですが、印象はいかがでしたか?
「万太郎がバラに話しかけているシーンを見た時、とても天真らんまんな印象を受けました。だからタイトルが『らんまん』なんだと納得しました(笑)。万太郎がそういう人物であるなら、僕が演じる高藤はその逆を行かなくてはいけない、万太郎を惑わせ傷つける存在としてガツガツ行かなければいけないという思いに至りました。それは台本を読んだ段階で考えたことでもあるのですが、神木さんの芝居を見て確信を持つことができました」
──役作りで重視したことは?
「僕は舞台で悪役や三角関係の恋敵役、クズの役をよくやりますが、悪いヤツには悪いヤツなりの正義があると思っています。それがないと薄っぺらな悪役になってしまうし、物語のスパイスにもなりません。だから、今回、監督とも話しながら、高藤は寿恵子に対して人生で初めて本当の恋をしたという設定を考えました」
──これから映像作品で演じたい役は?
「舞台では『悪役と言えば伊礼彼方』という声がありますが、それを映像の世界でも作って行けたらいいなと思っています。舞台では表情が分かりにくい狂気の人の役や殺人鬼の役を演じてみたい。それを経た上で、良い父親の役をやりたいです。やはり最終的には良い人だと思われたいです(笑)」
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。