【一問一答】羽生善治九段 新会長就任の決意「若い世代に将棋の素晴らしさを伝えていけたら」

2023年06月09日 18:40

芸能

【一問一答】羽生善治九段 新会長就任の決意「若い世代に将棋の素晴らしさを伝えていけたら」
<日本将棋連盟通常総会後会見>新会長に就任し、抱負を語る羽生善治新会長(撮影・尾崎 有希) Photo By スポニチ
 日本将棋連盟は9日、東京都内で通常総会と理事会を開催し、羽生善治九段(52)の新会長就任を正式決定した。17年2月から会長を務めた佐藤康光九段(53)は任期満了で退任する。4月に連盟役員選挙に初めて立候補し、予備選挙で承認を得ていた。
 羽生新会長は記者会見で「先ほど行われました通常総会で日本将棋連盟の会長を拝命いたしました。私自身にとっては初めての役職でもありますし、全く慣れていない仕事、職務に就くわけですけれども、この将棋界というのは本当に諸先輩の方々が必死の思いで約100年間の歴史を紡いできました。この伝統を次の世代にきちんといい形でつなげていけるように力いっぱい力を尽くす所存です。常任理事の皆さんはすでに全員再任、または理事経験者の方々ばかりなので、そういった意味では非常に心強いと思っています。今後も変わらぬ将棋界へのご支援のほどをお願いいたします」とあいさつした。

 羽生新会長との一問一答は以下の通り。

 ――今回、新会長に就任した経緯をあらためて。

 「将棋連盟の役員任期は1期2年。今回は3月末日が(理事立候補の)締め切りでしたので、その近い段階で最終的に決断しました。立候補の理由ですが、将棋の世界はずっと棋士が中心で運営をしてきました。最近は外部有識者の方にも入っていただき、様々なサポートをしていただいていますが、諸先輩方の姿を見て、私自身が本当の意味で将棋連盟や将棋界に貢献できるのか、というのはずっと考えていたところです。最終的にはこのタイミングで出てみようと決意をしたところです」

 ――同世代の佐藤前会長と何か交わした言葉は?

 「佐藤さんとは日常的にコミニュケーションをとっているというか、いろいろな形で話をしています。はた目で見ていても本当に会長職というのは激務で、毎日毎日、本当に大変な思いをしながら仕事をこなされている姿を見ていました。私自身も佐藤さんと同じように働けるのか、と考えたりもしたんですが、大変さを見つめながら、最終的には今回立候補することになったということです」

 ――新会長としての夢は?

 「まだ就任して数時間。個別の細かいことはお話しすることはできないんですが、最近は藤井聡太さんの活躍もあり、将棋の世界に大きな注目を集めていると感じています。そこでその若い子どもたちの世代に将棋というものの素晴らしさ、奥ゆかしさを伝えていけたらいいなと思っています。もう一つは、将棋の世界は様々な個人や団体の皆さまに支えていただいているんですが、地方の自治体の皆さまとも連携を深め、将棋を広く普及すると言うことだけではなく、その場所、その町の活性化のちょっとしたお手伝いのようなものができたらいいなと考えています」

 ――プレーヤーとの両立についての決意は。

 「佐藤さん、大山康晴先生もそうでしたし、私の師匠の二上もそうでした。プレーヤーをしながら運営をしていくのは、将棋の世界においては今までもかなりたくさん例があった。その大変さとか、どちらにも関係している皆さまに迷惑を掛けないとか、そういったことは実際に業務を行ってみないと分からない面はあるんですけど、今までのいきさつ、流れを含めて自分自身もできることをやりきれたらいいなと考えています」

 ――今までやってきた、対局以外のイベント出演などを控えることになる?

 「物理的時間は限られていますので、今までと全く同じような活動ができるかというのは未知数な部分がある。逆に忙しくなった方がしっかりと時間管理をしてメリハリをつけながら活動していけるとも考えています」

 ――二上さんと師弟での会長就任だが。

 「私が11歳で入門したとこからずっと役職に就いていたので、ずっとそういう姿を見てきた。ただ。その時は将来自分が役職に就くとは全く想像できなかったというのが率直な感想です」

 ――地方との連携についてなにか具体的な構想は?

 「(棋士養成機関の)奨励会とは別に研修会という組織があって、北海道、東北、東京、東海、関西、九州と日本全国の大きな拠点にある。そういった場所を軸にしながら、地元の皆さんと協力しながら、さまざまな活動を行えていけたらいいなと考えています」

 ――来年は連盟創設100周年と東西新会館の完成がある。それが今回の立候補の動機でもある?

 「24年が創立100周年の大きな節目。そのタイミングで東西会館も新しい場所に移転する。まだまだ資金面とか解決しなくてはならないところは多々あるが、非常にアクセスのいい場所に移転するので、将棋ファンの喜んでもらえるような場所にできたらいいなと思っています。ただそれが直接的な立候補の理由というわけではなく、結果として将棋ファンの皆さんに楽しんでいただける場所として実現できたらいいと思っています」

 ――現在の東京将棋会館は大山康晴さんが会長になる直前に建てられたが、その流れに似ている意識は?

 「大山先生が会長になられたことは私自身将棋を始めていなかった時期。リアルタイムでどうだったかは知らないのですが、様々な先輩方からその時の話は聞いています。個人的には初めて小学生名人戦に出たとき、この将棋会館の道場で行われていたので、私自身にとって将棋の道に進む原点の場所だと思うし、その場所を次の世代にも残すことができたらいいなと考えています」

 ――羽生会長待望論というか、周囲の期待の大きさは感じていた?

 「棋士の世界は一般の世界と違い、一般の場合は入って、その組織の中で一つ一つ段階を踏んで運営する流れになる。私は棋士としてはずっと活動は続けていたが、運営そのものに携わるのは今回が初めて。なにかすごく大きな決意を持って臨むというよりは、本当に立候補して大丈夫なんだろうか、周りの人たちに迷惑をかけることになってしまうのではないかとか、不安といいますかそういう要素は考えていました。今の段階で消えている訳ではないですが、職務に就いた以上は、そういう気持ちは振り払って、全力で仕事に臨むということです」

 ――AI(人工知能)時代となった将棋界、今後魅力をどう伝えたい?

 「AIによって棋士のレベルは確実に底上げされました。長い歴史のある暖冬的な世界ですが、技術であったり、中継での評価値表示などで将棋を分からない人たちにも伝えていく工夫、やり方はまだまだたくさんある。そういったものも積極的に採り入れながら日本の誇るべき伝統文化をたくさんの人たちに、指すことだけでなく、いろいろなかたちで将棋というものを通じて楽しんでもらえる機会、場所を提供していきたいと思います」

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