映画監督の中島貞夫さん死去 88歳 「日本の首領」「極妻」シリーズ

2023年06月16日 05:30

芸能

映画監督の中島貞夫さん死去 88歳 「日本の首領」「極妻」シリーズ
映画「多十郎殉愛記」公開記念舞台あいさつに登壇した中島貞夫監督(中央)と高良健吾(右から2人目)ら出演陣 Photo By スポニチ
 「まむしの兄弟」「日本の首領」シリーズなどで知られる映画監督の中島貞夫(なかじま・さだお)さんが11日、肺炎のため京都市内の病院で死去した。88歳。千葉県出身。葬儀・告別式は近親者による家族葬で済ませた。喪主は長男の純太(じゅんた)さん。
 中島さんは特に持病などもなく、自宅で映画の構想を練るなど穏やかに過ごしていた。5月に体力が落ちたため大事をとって入院。その後、肺炎を発症し、最期は純太さんら家族にみとられて静かに息を引き取った。

 東大卒業後の59年に東映に入社し、64年「くノ一忍法」で監督デビュー。66年の青春群像劇「893愚連隊」で、日本映画監督協会新人賞を受賞するなど注目された。67年にフリーとなったが、東映で菅原文太さん主演の「まむしの兄弟」「木枯し紋次郎」などの人気シリーズを手掛けた。

 70年代に入ると「沖縄やくざ戦争」や「やくざ戦争 日本の首領」に始まる3部作など、ゲリラ撮影もいとわぬ大胆な演出で迫力ある映像を生み出し、深作欣二監督とともに東映実録路線の中核を担った。川谷拓三さん、志賀勝さんら大部屋俳優を飲食に誘い「東映ピラニア軍団」として面倒を見た。娯楽アクションから時代劇、文芸作、お色気ものまで幅広いジャンルを手掛けた職人だった。

 時代劇復活への思いを込め、20年ぶりにメガホンを取った19年公開の「多十郎殉愛記」が遺作になった。同作の撮影現場などに密着したドキュメンタリー「遊撃/映画監督 中島貞夫」が今年1月に公開。第77回毎日映画コンクールで特別賞を受賞し、2月14日の表彰式に感謝の手紙を寄せた。3月5日、指導を担当していた滋賀県草津市のキッズシネマ塾完成発表上映会が最後の公の場となった。大阪芸術大学の教授として、モスクワ国際映画祭で最優秀作品賞を獲得した熊切和嘉監督、モントリオールファンタジア国際映画祭で作品賞の石井裕也監督ら、世界で活躍する後進も育てた。

 ▼北大路欣也(「暴動島根刑務所」などに出演)撮影現場では、映画作りのすさまじい魂をぶつけられました。今もその波動は消えていません。

 ▼名取裕子(「序の舞」などに出演)博識でどんな質問にもよどみなくお答えくださり、映画に懸ける情熱が80歳を超えても燃えている映画監督でした。

 ▼富司純子(「日本暗殺秘録」などに出演)京都国際映画祭の実行委員長として、京都の映画の灯を守ってくださいました。残念です。

 ▼高良健吾(「多十郎殉愛記」に主演)中島さんの現場での言葉の重みはとにかく深くて、シンプルで、一言の演出が役を深くしていく経験は初めてでした。

 ▼岩下志麻(「極道の妻たち 危険な賭け」などに主演)いつも優しく、あまり怒ったお姿を拝見したことがない、温かな監督さんでした。

 ◇中島 貞夫(なかじま・さだお)1934年(昭9)8月8日生まれ。千葉県出身。東大卒業後の59年、東映に入社し京都撮影所に配属。64年「くノ一忍法」で監督デビューし、京都市民映画祭新人監督賞を受賞。主な監督作に67年「大奥(秘)物語」、75年「暴動島根刑務所」、90年「女帝 春日局」、96年「極道の妻たち 危険な賭け」などがある。
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