「らんまん」演出・渡邊良雄氏 「志尊淳さんは意図をくむ力が強い」

2023年06月20日 09:00

芸能

「らんまん」演出・渡邊良雄氏 「志尊淳さんは意図をくむ力が強い」
連続テレビ小説「らんまん」で井上竹雄を演じる志尊淳(C)NHK Photo By 提供写真
 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「らんまん」でチーフ演出を務める渡邊良雄氏がインタビューに応じ、主人公・万太郎(神木隆之介)の相棒・井上竹雄を演じる俳優の志尊淳の魅力や演出方法などについて語った。
 ──「らんまん」収録開始前、志尊さんにどんな印象を抱いていましたか?
 「まずは格好いい人だと思っていました。出演していたNHKのドラマ『女子的生活』のイメージもあって、質実剛健というより中性的なイメージもありました」

 ──実際に演出してどんな印象を受けましたか?
 「芝居の機微が分かり、演出の意図をくむ力が強いと感じました。神木さんも同じなので、2人の芝居の時は演出がとてもスムーズです。例えば、2人が座って話しているシーンで、どちらかが立ち上がる時、そこには何らかの理由がありますが、志尊さんはその理由となる距離感をうまく作ってくれます。演出に対する理解力を感じます」

 ──神木さんと志尊さんは私生活でも仲が良いことで知られていますが、その仲の良さが芝居に影響することはありますか?
 「収録が始まる前、2人の仲の良さを気にしながら演出しなければいけないと思っていました。私生活の延長線のようになって、なれ合いのような雰囲気が出てしまうといけないと思ったからです。しかし、その危惧は杞憂に終わりました。2人はちゃんとわきまえていて、神木隆之介、志尊淳の関係性と万太郎、竹雄の関係性に一線を引いていました。2人は大人です。一方で、視聴者のみなさんが2人の仲の良さを知っていることは、ドラマにとって良い面があります。万太郎と竹雄は幼少の頃から十数年にわたって一緒に過ごしてきたという下地があるので、神木さんと志尊さんが実際に仲が良いということをベースにドラマを見ていただくと、万太郎と竹雄の関係の深さがより強く伝わると思います」

 ──竹雄をどのような人物として描いてきたのですか?
 「万太郎と竹雄が初めて東京に行った時、東京への思いをふくらませる万太郎に対し、当時はまだ従者だった竹雄が厳しく非難して制止するシーンがありました。あのシーンで竹雄は、自分の気持ちがここまでむしゃくしゃするのは相手が万太郎だからだということを万太郎に伝えます。万太郎とは、封建時代の中で番頭の息子として仕えている関係性とは別に、幼なじみとして仲良く過ごしてきた関係性があり、その狭間で葛藤していたのです。竹雄のベースは、万太郎という人間が好きだということです。万太郎の奔放さ、天真爛漫な人柄が好きで、だからこそ従者として万太郎についていくことも苦ではない。そのように描きました」

 ──竹雄は土佐で、万太郎の姉・綾(佐久間由衣)に告白しながら、万太郎と一緒に東京に行きました。
 「あの時、竹雄は別に万太郎について行かなくても良かった。でも、周りの人たちはみんな、万太郎を東京に1人で行かせたら大変なことになると思っている。竹雄は万太郎を放っておけない。なぜかと言えば、万太郎のことが好きだからです。綾のことが好きだと言いつつ、人間として万太郎が好きなところが竹雄のキャラクターの面白さです」

 ──万太郎との関係性は東京で従者から相棒に変わりましたが、演出に変化はありましたか?
 「関係性が変わると、当然、万太郎に対する竹雄の芝居のアプローチの仕方は変わります。私たちも気をつけて演出していますが、志尊さんがちゃんと距離感を考えて演じてくれていて、私たちが、なるほど!と思うことがあります」

 ──今後、竹雄と綾の関係発展が気になるところです。
 「竹雄はどういう状況になったら万太郎のそばから離れる決意をするのかということだと思います。万太郎を任せられる人が現れ、自分の存在意義を別のところに見いだせるかどうかがポイントになります」

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。
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