藤井聡太王将 “死に体”から大逆転勝ち「終盤、苦しい局面が続いた」 28日準決勝の相手は羽生九段
2023年06月21日 04:30
芸能
「中盤、攻めを受け止められる展開になってはっきり苦しくした。終盤、苦しい局面が続いて(駒が)足りないと思ってました」
中盤以降、村田が繰り出す新戦法・村田システムに苦しんだ。7冠の宿命だろう。タイトル戦続きで本拠地・関西将棋会館では1月のA級順位戦以来5カ月ぶりの対局。会館内のレストラン「イレブン」の看板メニュー「バターライス」を味わいながら37手目、五段目まで進出した村田銀への応対を考えた。
「昼食休憩で何かありそうと。でも考えても思わしい手段がなかった」
日本将棋連盟が運営する棋譜中継のAI評価値では80手目時点で「6%―94%」に。それでも容易に土俵を割らず、何度も押し返す。そして両者1分将棋に。小学6年からプロに交じって5連覇した詰め将棋解答選手権が表す終盤力を発揮する。「勝ちがなかなか見えない。(藤井相手に)勝つ大変さを思い知らされた」。そうこぼした村田の根負けしたような81手目の失着を誘い、「96%―4%」と勝負をひっくり返した。
「棋士人生を懸けて戦う。最強の相手で、オリジナル戦法の真価を問いたい」。戦前、村田が本紙に語った意気込み通り、角道を開けず右銀を繰り出す村田システムを採用してきた。ただ、その右銀は、基本形とする5筋からではなく3筋からの活用。村田自身「新村田システムです」とする新構想を藤井が危うく退けた。
全8冠独占へ、最後の1冠は「鬼門」だった。挑戦者決定トーナメントは16人が横一線で争い、挑戦権獲得には4連勝が求められる、1敗も許されない戦い。5番勝負と7番勝負があるタイトル戦に出場すれば15回中15期獲得。つまり100%。ところが王座戦では過去5期、その5番勝負が遠かった。
この日、勝利した羽生と28日に準決勝でぶつかることが決まった。3月までの第72期ALSOK杯王将戦7番勝負で対戦し、4勝2敗で退けて以来。「楽しみ。いい内容にできるように、しっかり良い状態で臨みたい」。23日には兵庫県洲本市で、佐々木大地七段(28)を挑戦者に迎える棋聖戦第2局が控える。20歳はまた一回り大きくなって、新連盟会長にぶつかっていく。
≪村田六段大金星あと一歩≫金星まであと一歩だった。村田は終局後、「自分が全く見えなかった手を指された」と勝勢で迎えた終盤、想定外の勝負手を連発し、持ち時間を削りにきた藤井の勝負術に脱帽した。それでも自ら編み出した村田システムを戦前から公言してぶつけ、手応えを得た。「藤井王将にとって経験値が低く、こちらに経験値のある将棋に持ち込めば、ペースを握れる」。その哲学は藤井対策を迫られる、1強時代の全棋士に指針を与えそうだ。