<なるほどコラム③>「コスプレ名刺」が恥ずかしいのは「いにしえ」のせいではない【コスプレ図鑑】

2023年07月07日 11:00

芸能

<なるほどコラム③>「コスプレ名刺」が恥ずかしいのは「いにしえ」のせいではない【コスプレ図鑑】
<なるほどコラム③>「コスプレ名刺」が恥ずかしいのは「いにしえ」のせいではない Photo By 提供写真
 ビジネスの分野では、紙のカード「名刺」を交換しあう行為はコロナ禍を経た今でも続いている。初対面でもオンライン上で交流することは増え、名刺のやりとりは格段に少なくなったが、リアルな場で初対面した際に名刺はまだ必要不可欠である。コスプレ界隈でも2010年頃までは、コスプレイヤー同士のコミュニケーションとして欠かせないものとして存在していた「コスプレ名刺」。しかし今ではほとんど見かけることがなくなった。この名刺における交流はコスプレ界隈において、いつから廃れていったのだろうか。 【COSPLAY MODE
 コスプレの交流の場では、コロナ禍よりさらに十年前には名刺における交流は見かけなくなっていた。その要因とされているのが、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の普及である。2006年3月にTwitterが誕生した。Twitterは誕生当初SNSではなく「インタレストネットワーキングサービス」と名乗っていた。ユーザー数は右肩上がりに増え続け、途中経営者が変わるも今年で17周年を迎えている。

 しかしコスプレイヤー同士を結ぶ、またはコスプレイヤーとカメラマンを結ぶコスプレ界隈には、もともとコスプレ専用のSNSは存在していた。2大コスプレSNSと言われていたのが「Cure」と「コスプレヤーズアーカイブ」である。閲覧のみだが、交流目的の利用者は全員アカウントを取得する必要があった。利用者間のトラブルを避けるために、現在よりもかなり多くの個人情報(公開はされない)を利用登録する際には求められていた。Twitterの普及以前にコスプレ界隈ではSNSでの交流が主流であったということは、単純にSNSの普及により、名刺における交流がなくなったとは言えないと思う。

 コスプレイヤーは自身の名刺に「Cure」と「コスプレヤーズアーカイブ」の2つのアカウントを記載するのが一般的であった。コスプレイヤーだけではない、イベント会場に出入りするカメラマンも、この2大アカウントは取得していた。そうでないと、コスプレイヤーから名刺をもらっても、カメラマン本人が名刺を渡しても、その後の交流はできないからである。名刺に記載されているのは、自身のコスプレ写真と「コスプレネーム」、「Cure」「コスプレヤーズアーカイブ」のアカウント、その他「mixi(ミクシィ)」や自前のホームページアドレスなどであった。

 TwitterがSNSとして広く利用され始めたと同時に、コスプレという趣味もメジャーなものになっていった。コスプレ専用SNSを利用するよりも、広くあまねく自身のコスプレを知ってもらうことができる、またTwitterはアカウントを知らなくても、いろいろな方法で検索ができ、目的の人にたどり着くことができる。

 コスプレが「密かな趣味」であった時代は専用SNSでの交流がメーンであった。社会的にコスプレが一つのカルチャーとして認知されてくると、基本的に他人には見せない、人前に晒さない「コスプレ名刺」は必要性がなくなっていった。「コスプレ名刺」を恥ずかしがるコスプレイヤーは多い。その理由は自身の昔を映し出す、古い「いにしえ」なものであったからではなく、公にはできない「密かな趣味」だったからというのは穿った見方であろうか。

 (COSPLAY MODE編集部 大門 太郎)
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