人間国宝認定にも、あくまで自然体の五街道雲助
2023年07月22日 20:46
芸能
東京・墨田区本所の生まれ。明治大学を中退して1968年に十代目金原亭馬生に入門。「役の心を演じるんだ」という師匠の教えを忠実に守ってきた。81年に真打昇進後、幕末から明治に活躍した三遊亭円朝の「双蝶々」「名人長二」などの作品に取り組んできたほか、「唐茄子屋政談」「宮戸川」といった長編の人情噺にも秀で、情緒あふれる語りと巧みな人物描写には定評がある。
2009年4月のことだから、もう14年も前になるが、スポニチ本社からもそう遠くない深川江戸資料館小劇場で「とっておき寄席!」と題するDVDの収録が行われ、これに通った。亭号別に実力者が参加し、古今亭&金原亭の巻に雲助も出演。これまた円朝作と言われる「お若伊之助」を熱演した。懐かしさがこみあげてくる。
自ら珍しい名前の持ち主。弟子にも真打昇進と同時にユニークな名前をつけることで知られる師匠だ。三代目桃月庵白酒(54)、四代目隅田川馬石(54)、三代目蜃気楼龍玉(50)はいずれ劣らぬ本格派。雲助から円朝ものも伝授され、高座にかけている。
19年2月、文京シビックホールでの「雲助・白酒親子会」も思い出す。弟子の白酒が「お茶汲み」と「笠碁」、師匠の雲助が「千両みかん」と「夏泥」をかけ、熱い師弟共演を堪能した。
人間国宝について雲助は「肩書きに負けると自由な芸ができなくなる」と話し、「いつも通り」を心掛けて高座に臨みたいと謙虚に語る。この自然体が心地良い。師匠の十代目馬生は82年9月13日に食道がんのため54歳の若さで早世。昭和の名人と言われた五代目古今亭志ん生の長男で、三代目古今亭志ん朝の兄、そして女優池波志乃(68)の父親としても知られた枯淡の人。大の酒好きでも知られたが、今ごろは天国で祝杯をあげているに違いない。