【悼む】本紙連載の官能ミステリー小説 作品の組み立てや流れを非常に丁寧に、分かりやすく説明してくれた

2023年07月25日 05:15

芸能

【悼む】本紙連載の官能ミステリー小説 作品の組み立てや流れを非常に丁寧に、分かりやすく説明してくれた
森村誠一さん Photo By スポニチ
 【スポニチOB 神戸陽三】私が文化社会部部長だった1993年9月から翌94年5月までの約8カ月間、森村先生には本紙に小説「夢の原色」を連載していただいた。
 この作品は先生が初めて手がける官能ミステリー小説。既にハードボイルドの巨匠としての地位は確固たるものとなっていたが、決して偉ぶることなく、作品の組み立てや流れを非常に丁寧に、分かりやすく説明してくれた。

 あれは確か、東京都町田市のご自宅での打ち合わせだったように記憶しているが、その時の先生の柔らかで、素敵な笑顔が今も心に残っている。

 その後も何度かご自宅にお伺いする機会があった。その際、作家になられた経緯、物を書く人間の心得などをお話しいただく幸運に恵まれた。その時の先生の口調もやはり優しく、丁寧で、しかも一生懸命。先生はホテルマンを経て苦労して作家になられた。そうした経験が人との接し方に表れていたのだと思う。

 文章にはとても自信を持っていた。重い題材を扱うことが多かったからか、先生は文章表現の持つ重さや色合いに気を配り、まるで物事の輪郭が浮かび上がるような文章を書かれた。

 社業が忙しくなり、しばらく連絡が途切れると、先生の方から「どうしてますか」と連絡をくださることもあった。贈り物を頂いたことも。私の方からは大したご恩返しもできず、感謝しかありません。

 先生のご冥福を心よりお祈りいたします。

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