次女の繭子さんが語った“父・森村誠一” 人間の尊厳伝え続け「父は最後まで作家だった」

2023年07月25日 09:14

芸能

次女の繭子さんが語った“父・森村誠一” 人間の尊厳伝え続け「父は最後まで作家だった」
13年、自宅書斎で作業する森村誠一さん Photo By 共同
 映画化もされたベストセラー小説「人間の証明」などで知られる作家の森村誠一(もりむら・せいいち)さんが24日午前4時37分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。90歳。埼玉県出身。葬儀は家族葬で行う。後日お別れの会を開く予定。国家や社会の闇に斬り込むなど“反骨の社会派”のイメージが強かった森村さん。家族に見せたその素顔は、いつも優しくおちゃめな父親像だった。
 次女の繭子さん(40)によると「とにかく温厚で家族に声を荒らげるようなことが全くない人でした」。晩年は認知症を患い、見舞いに行くと「君は誰だい?」と問われることも。でも、そのたびに「疲れるからお帰りなさい」と優しく丁寧な言葉で気遣ってくれたそうで「自分たち家族にだけでなく、父は相手がたとえ知らない人であっても、いつも優しく丁寧に接してきた人なんだとよく分かりました」と思慮深く誠実な人柄をしのんだ。

 戦争で飢えを経験し「家族におなかをすかせてはいけないという思いが強く、家族みんなで食事をするのが好きでした」という。いつもおちゃめで明るく「私の日記や作文に勝手に赤ペンで落書きをするので、思わず怒っちゃったこともあるくらいです」といたずら好きな一面もあった。

 2021年に「老いる意味」、22年に「老いの正体 認知症と友だち」を刊行し、話題になった。編集者でもある繭子さんは「父は最後まで作家だった。30歳を過ぎてから作家デビューし、その後は休まずに書き続けることができたけうな存在」と評し「貫いたテーマは人間の命の尊厳。それを使命に50年以上書き続けてきた尊敬すべき人」と称えた。

 人の話を聞くのが好きで、自分と違う意見には興味深そうに耳を傾けていたそうで「現代はいろんな意見があるのがいい。それを話せる世の中はなんて楽しいんだ」と話していたという。シャープな文章で社会の不条理に斬り込む一方で、作品に流れる人間の情緒。懐の深さと優しさがその根底にあった。

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