貫地谷しほり 音楽朗読劇で「歌デビュー」

2023年08月10日 09:30

芸能

貫地谷しほり 音楽朗読劇で「歌デビュー」
音楽朗読劇「銀河鉄道ノ夜」に出演する貫地谷しほり Photo By スポニチ
 【牧 元一の孤人焦点】俳優の貫地谷しほり(37)が8月18日から20日まで音楽朗読劇「銀河鉄道ノ夜」(東京・南青山の円形ホールBAROOM)に出演する。
 貫地谷は「朗読劇とはいえ、私としては初めてミュージカルに挑戦するような気持ちです。私にとって大きな決断でした」と心境を明かす。

 過去には松任谷由実の歌と演劇が一体となったライブパフォーマンス「ユーミン×帝劇」(2012年)に主演した際にアンコールで、松任谷、共演の陽月華とともに「卒業写真」を歌ったことがあるが、1人で歌うのは今回が初めてだ。

 「ミュージカルは声をかけていただいたことがあるのですが、私には無理だという先入観があってお断りしていました。今回は演出が小見山佳典さんで、小見山さんとはこれまでに何度かラジオドラマでご一緒させていただいていて、尊敬し信頼しているので挑戦してみようと思いました。私が言うのもおこがましいのですが、小見山さんの演出は的確なので、私が思う方向に導いてくれるだろうという思いがありました」

 これまで小見山氏が演出するNHKのオーディオドラマ「73年前の紙風船」(2018年)、「きみに微笑む、クリスマス」(21年)などに出演。小見山氏がドラマでの貫地谷の歌声を聞いて好感を抱いていたこともあって今回の音楽朗読劇への出演依頼に至った。

 宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」を朗読と歌で表現する舞台。元宝塚歌劇団雪組トップスターで俳優の壮一帆がジョバンニ、貫地谷がカムパネルラを演じる二人芝居で、貫地谷は計12曲(うち6曲はソロ)を歌う。

 「良い歌が多いので、台無しにしたくないという気持ちが強いです。私は楽譜が読めないので、音の上げ下げを目で追いながら先生と一緒に歌うところから練習を始めました。先生には『もっと声を大きく出してください』と言われました。大変な仕事を引き受けたと思います」

 この公演は出演者が交代する形式。1週目(8月11日~13日)が古屋呂敏と三浦涼介、2週目(18日~20日)が壮と貫地谷、3週目(25日~27日)がTAKE(Skoop On Somebody)と島袋寛子。いずれも定員約100人の円形ホールで観客が宮沢賢治の世界観を臨場感、没入感たっぷりに味わえるのが特徴だ。

 「宮沢賢治さんは他人に迷惑をかけず自分の中でいろいろ整理しているという印象があります。私は20代の頃、自分に向き合うと辛すぎて前に進めないので、割と無視して生きていましたが、30代になって自分と向き合わざるを得なくなって、それでいろいろ知ることができたし、成長できた部分もありました。自分の中にいろんなものがあるんだなと思いました。私にとって宮沢賢治さんの世界は理想的に見えます。歌も重要ですが、台本を読むと本当に優しい話なので、物語自体を楽しんでほしいと思います」

 実は、1人11役で、カンパネルラ以外のキャラクターも演じる。

 「11人は多すぎますね…(笑)。小見山さんは演じ分けについて『声を変えるということではない』とおっしゃっていて、それは芯の部分を変えるということだと思います。お芝居を見慣れている方はこちらが大して抑揚をつけていなくても変換して理解してくれるところもあるので、そんな想像力、共感力に助けられながらやります」

 この音楽朗読劇は芝居だけ上手でも成立しないし、歌だけ上手でも成立しない。芝居と歌の魅力を兼ね備えた役者もしくは歌手だけが表現できる特別な舞台と言える。

 小見山氏は「ダイアローグがあって話が展開する中で歌が導かれるように出てくる。そこからまた話が展開していく。貫地谷さんのとても素敵な感性で良い形で表現してくれるとうれしい」と期待を込める。

 事の成否は貫地谷の感性にかかっている。

 「心臓がぐっと上がる感じです。お芝居を始めた時もドキドキする音が聞こえてしまうのではないかと思いましたが、その時と同じような感覚があります。3日間楽しんでやれればいいな、と思います」と貫地谷は笑みをこぼした。

 ついに訪れる「歌デビュー」の時。その瞬間を見守りたい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。
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