「どうする家康」大河異例の同一合戦3度演出“小牧長久手”今度は家康側「感慨深い」“謎の堀”もCG駆使

2023年08月19日 13:50

芸能

「どうする家康」大河異例の同一合戦3度演出“小牧長久手”今度は家康側「感慨深い」“謎の堀”もCG駆使
大河ドラマ「どうする家康」第32話。“謎の堀”を造る榊原康政(小平太)(杉野遥亮)は…(C)NHK Photo By 提供写真
 嵐の松本潤(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は20日、第32回「小牧長久手の激闘」が放送され、羽柴秀吉と徳川家康の唯一の直接対決「小牧・長久手の戦い」(天正12年、1584年)が描かれる。同回の演出を担当した加藤拓監督は「秀吉」「功名が辻」でも小牧長久手回でメガホンを執っており、大河で同一合戦エピソードを3回も手掛けるのは異例。「過去2回は秀吉側、今回は家康側から描けて、演出冥利に尽きます」と感慨。バーチャルプロダクションを駆使し“新しい小牧長久手”を創出した撮影の舞台裏を聞いた。
 <※以下、ネタバレ有>

 「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどの古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。

 加藤監督は1991年の入局以来、ドラマ部一筋。大河ドラマに携わるのは96年「秀吉」、2006年「功名が辻」、13年「八重の桜」に続き、4作目。今回は初回「どうする桶狭間」(1月8日)など7話分を手掛けるとともに、演出統括としてインカメラVFXを駆使したバーチャルプロダクションを担当している。

 「小牧長久手は家康にとって非常に大きな合戦の一つなので、バーチャルプロダクションが最も効果的に使える回の一つになると当初から考えていました。僕が各セクションと色々と準備を進めてきたので、そのまま演出もする流れに自然となって。何か小牧長久手に特別な思い入れがあって、今回立候補したというわけじゃないんです(笑)」

 「秀吉」「功名が辻」の小牧長久手を整理しておこう。

 ■「秀吉」第36回「家康VS秀吉」(1996年9月15日)
 <秀吉方>
 羽柴秀吉:竹中直人
 羽柴秀長:高嶋政伸
 三好秀次:三国一夫
 池田恒興:五代高之
 おね:沢口靖子
 茶々:松たか子
 なか:市原悦子
 <家康方>
 徳川家康:西村雅彦(現・西村まさ彦)
 織田信雄:西川弘志
 石川数正:誠直也

 主人公・秀吉と母・なかの母子愛が肝。

 ■「功名が辻」第29回「家康恐るべし」(2006年7月23日)
 <秀吉方>
 千代:仲間由紀恵
 山内一豊:上川隆也
 羽柴秀吉:柄本明
 羽柴秀次:成宮寛貴
 池田恒興:桐山浩一
 森長可:山口粧太
 寧々:浅野ゆう子
 <家康方>
 徳川家康:西田敏行
 織田信雄:大柴邦彦
 石川数正:大河内浩

 秀吉と家康の心理戦。秀吉の甥・秀次にスポットが当たり、主人公・一豊は秀次を支える。

 「秀吉」は秀吉と数正のやり取りもポイント。「どうする家康」第31回(8月13日)と同じく、数正は大名物の茶器「初花の茶入」(「どうする家康」は初花肩衝)を秀吉に献上した。

 加藤は大学生の頃、テレビ朝日の刑事ドラマ「特捜最前線」の再放送に夢中。「(吉野刑事役の)誠直也さんに数正役をお願いしました。この回は数正出奔も盛り込まれているんですけど、竹中さん・市原さん・誠さんのラストシーンが素晴らしく、今も凄く印象に残っています」と自身の大河初演出回を振り返った。

 「功名が辻」も秀吉目線の展開となり「西田さんが“食えない家康”を巧妙に演じてくださいました」。そして、3度目の小牧長久手は、家康が主人公。「感慨深いですよね。僕は関西出身なので、過去2回の小牧長久手は天下人に近づく秀吉に対して『いいぞ。やれ、やれ』という気持ちだったんですけど(笑)、今回は逆の視点から描ける。これは本当に演出冥利に尽きますよね。家康サイドに立ってみると、小牧長久手というのは、いかに秀吉が食えない奴だったが、そして、いかにして10万の秀吉軍を相手に一大ピンチを乗り越えたか。そこをどう描くかが大事になると考えていました」

 古沢氏とスタッフは21年5月から約半年、シナリオハンティング(シナハン、脚本作りのための取材)で徳川家康ゆかりの地を訪問。ほぼ全部を網羅した。

 前回第31回、榊原康政(小平太)(杉野遥亮)が「兵を引かず、秀吉を迎え撃つは、小牧山城が最もふさわしゅうござる。二重の土塁と空堀を張り巡らし、難攻不落の要害にいたします」と策を献じたが、現地を訪れた加藤監督たちは今も残る堀を目の当たりに。これが今作の小牧長久手の作劇・演出につながった。

 次回予告に「ドッコイ、ドッコイ」と“謎の堀”を造るシーンが映ったが、スタジオ撮影とバーチャルプロダクションのみで表現。合戦シーンがわずかだった「秀吉」「功名が辻」に対し「小牧長久手は夜半や夜明け、黄昏時の合戦があるので、ロケで撮るのは非常に困難。今回は、バーチャルプロダクションだからこそ合戦シーンも描けた小牧長久手になったと思います」と手応えを示した。

 康政指揮による“小牧山城リニューアル”や武田遺臣「赤備え」を率いる井伊直政(板垣李光人)の異名「井伊の赤鬼」誕生の瞬間、本多忠勝(平八郎)(山田裕貴)愛用の槍「蜻蛉切(とんぼきり)」に期待が集まる 。

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