「どうする家康」新・小牧長久手は“泥まみれ”堀造り映像化もCGなければ「無理」大河異例3度演出の挑戦

2023年08月27日 06:00

芸能

「どうする家康」新・小牧長久手は“泥まみれ”堀造り映像化もCGなければ「無理」大河異例3度演出の挑戦
大河ドラマ「どうする家康」第32話。“謎の堀”を造り、泥まみれになる本多忠勝(平八郎)(山田裕貴・中央)と榊原康政(小平太)(杉野遥亮・右端)は…(C)NHK Photo By 提供写真
 嵐の松本潤(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は今月20日、第32回「小牧長久手の激闘」が放送され、羽柴秀吉と徳川家康の唯一の直接対決「小牧・長久手の戦い」(天正12年、1584年)が描かれた。同回の演出を担当した加藤拓監督は「秀吉」「功名が辻」でも小牧長久手回でメガホンを執っており、大河で同一合戦エピソードを3回も手掛けるのは異例。「過去2回は秀吉側、今回は家康側から描けて、演出冥利に尽きます」。バーチャルプロダクションを駆使し“新しい小牧長久手”を創出した撮影の舞台裏を聞いた。
 <※以下、ネタバレ有>

 「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどの古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。

 加藤監督は1991年の入局以来、ドラマ部一筋。大河ドラマに携わるのは96年「秀吉」、2006年「功名が辻」、13年「八重の桜」に続き、4作目。今回は、ここまで初回「どうする桶狭間」(1月8日)など7話分を手掛けるとともに、演出統括としてインカメラVFXを駆使したバーチャルプロダクションを担当している。

 「小牧長久手は家康にとって非常に大きな合戦の一つなので、バーチャルプロダクションが最も効果的に使える回の一つになると当初から考えていました。僕が各セクションと色々と準備を進めてきたので、そのまま演出もする流れに自然となって。何か小牧長久手に特別な思い入れがあって、今回立候補したというわけじゃないんです(笑)」

 竹中直人が主人公・秀吉役、西村雅彦(現・西村まさ彦)が家康役を演じた「秀吉」は第36回「家康VS秀吉」(96年9月15日)で、柄本明が秀吉役、西田敏行が家康役を演じた「功名が辻」は第29回「家康恐るべし」(06年7月23日)で小牧長久手が描かれた。

 合戦シーンがわずかだった過去2作に対し、今回は“謎の堀&檄文&一番槍”の榊原康政(小平太)(杉野遥亮)、“井伊の赤鬼(赤備え)”の井伊直政(板垣李光人)、“天下無双&蜻蛉切(とんぼきり)”の本多忠勝(平八郎)(山田裕貴)をフィーチャー。「小牧長久手は夜半や夜明け、黄昏時の合戦があるので、ロケで撮るのは非常に困難。今回は、バーチャルプロダクションだからこそ合戦シーンも描けた小牧長久手になったと思います」と手応えを示した。

 康政が設計・指揮した“謎の堀”は、羽柴秀吉(ムロツヨシ)に気づかれることなく小牧山城から打って出るための“抜け道”だった。両軍のにらみ合いが続く中、池田勝入(恒興)(徳重聡)が迂回して岡崎城を攻める奇襲「三河中入り策」に、徳川家康(松本潤)が対抗。見事に中入り勢を叩き、大勝を呼び込んだ。

 古沢氏とスタッフは21年5月から約半年、シナリオハンティング(シナハン、脚本作りのための取材)で徳川家康ゆかりの地を訪問。ほぼ全部を網羅した。小牧山城を訪れた加藤監督たちは、今も残る堀や土塁を目の当たりに。これが今作の小牧長久手の作劇・演出につながった。過去2作の小牧長久手には、堀(抜け道)の描写はない。

 「今回の作品は、もともと“三河武士=泥臭い”“土のにおいがする人たち”とデザインしていて、(音楽担当の)稲本響さんも『泥まみれの君』という曲を作ってくださったほど。なので、三河兵が泥まみれになって堀を造るというのは、本当にドラマチックな展開ですよね。小牧の学芸員さんの解説も非常に興味深く、堀造りの部分も何とか映像化したいと思いました」

 堀造りのシーンも合戦シーン同様、スタジオ撮影とバーチャルプロダクションで表現。「見学にいらした小牧市の方々も驚かれて。我ながら、よく映像化できたなと。『秀吉』や『功名が辻』の頃なら、無理だったと思います」と撮影技術の進歩に感慨。

 中盤のヤマ場は文字通り「泥」がテーマになり「小平太、直政、平八郎をはじめ、三河の若武者には全員、泥まみれになってもらいました。(茶色が印象的な)オープニングのミニアニメも、泥を表現しています。同時に徳川四天王のフィーチャー回でもあるんですが、家臣団の中でもジェネレーションギャップみたいなものが生まれている状況で、小平太、直政、平八郎の新世代3人がそれぞれ、どのような殿への思いを抱いて、秀吉との“天下獲り決勝戦”に挑むのか。泥にまみれながら、どういうふうに合戦で花を咲かすのか。殿の名の下に輝く新世代の台頭も描ける、贅沢な小牧長久手を担当できて、これも演出冥利に尽きます」と結んだ。

 今夜の第33回「裏切り者」(8月27日)も加藤監督が担当。「石川数正(松重豊)出奔」という徳川の屋台骨が崩れる大事件が起こる。また、秀吉が贅を尽くした豪華絢爛な大坂城の描写にバーチャルプロダクションの効果が発揮されるのかも注目される。

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