「らんまん」ついに最終週 副題は「スエコザサ」植物名で統一「植物図鑑のように」脚本・長田育恵氏の思い
2023年09月22日 08:15
芸能
朝ドラ通算108作目。江戸末期から昭和の激動の時代を生き抜き、明るく草花と向き合い続けた主人公・槙野万太郎の人生を描く。
万太郎(神木隆之介)の生涯に不可欠だったのが「日本の植物を網羅した図鑑の刊行」という大冒険を共にした最愛の妻・寿恵子(浜辺美波)。2人の物語を締めくくる最終週のサブタイトルは「スエコザサ」が最もふさわしく思える。
週の副題を植物名で統一した理由について、長田氏は「(制作統括の)松川(博敬チーフ・プロデューサー)さんは『大変なので、そこまでこだわらなくても大丈夫』と言ってくださったんですけど、我ながら最後まで頑張りました(笑)。万太郎の植物図鑑完成が物語のゴールになるので、最終回が放送されて、すべてを見渡した時、週タイトルも含めてドラマ全体が植物図鑑のようになるといいなと。コンセプトは初期の段階で決めました」と明かした。
週タイトルの付け方は、主に3パターンに分けられる。
(1)登場人物とのつながり
「新種発見など植物学の話ばかりだと、植物に興味のない視聴者の方々が飽きてしまうんじゃないかと思いまして。植物と人間を結び付ける物語を紡ごうということは、最初からかなり意識していました。第1週の『バイカオウレン』は母・ヒサ(広末涼子)の思い出が詰まった万太郎の原点の花。第5週の『キツネノカミソリ』は、万太郎に大きな影響をもたらす早川逸馬(宮野真守)を彩る花として用いました。最終週の『スエコザサ』は、まさに寿恵子の名が冠された植物です。モデルとした富太郎博士も新種の学名として妻の名前を永久に留めました。そこには大きなメッセージが込められていると感じています」
(2)植物学史に残る業績
「物理的な使い方になりますが、万太郎たちの業績に関わる植物は絶対外せません。万太郎が発見した『マルバマンネングサ』(第12週)『ムジナモ』(第17週)、万太郎と大窪(今野浩喜)が発見した『ヤマトグサ』(第15週)、万太郎が虎鉄(寺田心)に導かれて発見した『ヤッコソウ』(第19週)、万太郎と田邊(要潤)が競った『キレンゲショウマ』(第20週)。ただ業績そのものを描くのではなく、そこに到達するまでの人間関係をメインに、その“あや”として最後にもたらされるものとして描くよう心掛けました」
(3)長田氏からの発注
「関東大震災(大正12年、1923年)が起こる第25週の『ムラサキカタバミ』は、私から植物チームに『それでも力強く咲く花は何ですか?』と問い掛けて、候補を挙げていただきました。劇中の植物はレプリカなので、私のお願いした文脈に合いつつ、レプリカを作れるかどうかの兼ね合いもあります。(万太郎が寿恵子にバイカオウレンの絵を描くうちに、図鑑作りを思いつく)第8週の『シロツメクサ』(クローバー)は、実は『カガリビソウ』(牧野博士が命名したシクラメンの和名)の週タイトルで一度書き上げていました。ただ撮影の時期にカガリビソウが手に入らず、レプリカも作れない。代わりになるのはシロツメクサだけで、選択の余地はありませんと。なので、そこからシロツメクサが最も生きる文脈を再構築して、台本を書き直したこともありました」
関東大震災により大方の原稿は燃えてしまったものの、夢の図鑑完成へ再び歩み始めた万太郎と寿恵子。残り1週、「らんまん」も間もなく“完成”の時を迎える。
【「らんまん」の週サブタイトル】第1週バイカオウレン、第2週キンセイラン、第3週ジョウロウホトトギス、第4週ササユリ、第5週キツネノカミソリ、第6週ドクダミ、第7週ボタン、第8週シロツメクサ、第9週ヒルムシロ、第10週ノアザミ、第11週ユウガオ、第12週マルバマンネングサ、第13週ヤマザクラ、第14週ホウライシダ、第15週ヤマトグサ、第16週コオロギラン、第17週ムジナモ、第18週ヒメスミレ、第19週ヤッコソウ、第20週キレンゲショウマ、第21週ノジギク、第22週オーギョーチ、第23週ヤマモモ、第24週ツチトリモチ、第25週ムラサキカタバミ、第26週スエコザサ