羽生善治九段 藤井8冠を祝福「センス、モチベーション、体力、時の運、全てが合致した前人未到の金字塔」

2023年10月12日 04:40

芸能

羽生善治九段 藤井8冠を祝福「センス、モチベーション、体力、時の運、全てが合致した前人未到の金字塔」
羽生善治九段 Photo By スポニチ
 藤井聡太王将(21)の8タイトル制覇を受け、「全冠」の大先輩でもある羽生善治九段(53)=日本将棋連盟会長=が11日、祝福メッセージを寄せた。27年前に当時の7タイトル全てを獲得し、史上空前のブームを巻き起こした、まさに当事者。自身より4歳2カ月若くしてタイトルを独占した偉業に経験者ならではの温かい言葉を贈った。
 決して長くはない。かといって簡潔過ぎることもない。「8冠達成、誠におめでとうございます」で始まる羽生の祝辞はこう続く。「継続した努力、卓越したセンス、モチベーション、体力、時の運、全てが合致した前人未到の金字塔だと思います」

 あの時の自分を回想していたことだろう。1996年2月14日、山口県豊浦町(現下関市)の「マリンピアくろい」で行われた第45期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)第4局第2日。谷川浩司王将(当時)を投了に追い込んだ午後5時6分、全7冠独占が決まった。数分後に対局室を埋めた報道陣は50社222人。足の踏み場もないほどの対局室で、25歳の羽生は泰然とした居住まいを見せていた。

 快挙の陰にはドラマもあった。前年の95年、すでに6冠を保持している状態で王将戦に臨んだ羽生の前に立ちはだかったのは谷川だ。1月12、13日の第1局直後に起きた阪神大震災で神戸市内の実家が大破した谷川の鬼気迫る熱量に押され、3勝4敗で敗退する。最終第7局(3月23、24日)は千日手指し直しの末、力尽きた。

 だが羽生の凄さはここから発揮される。4月以降は全ての防衛戦を制して王将戦のリベンジマッチを実現させた。今度は無双の4連勝。前述の決着局は対局前日から高熱と鼻水、喉の痛みに苦しめられながらも、82手の短手数で谷川を仕留めた。まさに怪物だ。

 あれから27年。2017年には永世7冠資格を手にし、羽生の後に羽生なし…の時代が続くかと思われた頃、愛知県瀬戸市から規格外の棋士が予想外の速度で台頭してきた。そしてノンストップで抜き去った。

 「今後も将棋のさらなる高みを目指して前進を続けられることを期待します」

 頂点に達した2人の間には常人には計り知れないシンパシーがある。一方で羽生には現役棋士としての務めも欠かせない。今年は王位戦で挑戦者決定戦に進出したほか、王座戦、竜王戦では4強入りと、依然としてトップの力を誇示している。そして現在進行中の第73期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグは開幕2連勝で暫定首位に立ち「次もしっかり頑張っていきたい」と決意を示した。タイトル通算100期を目指す羽生にとって藤井8冠は、倒すべき相手以外の何物でもない。
  

この記事のフォト

【楽天】オススメアイテム