「どうする家康」ムロツヨシ語る“最恐秀吉”怪演の舞台裏「点と点を線に」最期は悲哀 秀吉役再演に意欲
2023年10月15日 20:45
芸能
【「どうする家康」豊臣秀吉役・ムロツヨシインタビュー（1） 】
嵐の松本潤（40）が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」（日曜後8・00）は15日、第39回が放送され、太閤・豊臣秀吉の最期が描かれた。ヒール役として大河史上“最恐”の呼び声も高い、新たな秀吉像を創り上げた俳優のムロツヨシ（47）に撮影の舞台裏や役作りについて聞いた。「もう一度やってみたいですね」と秀吉役再演にも意欲を示した。
＜※以下、ネタバレ有＞
「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどの古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。
第39回は「太閤、くたばる」。秀吉は家康と最後の対面。秀吉は「世の安寧、など、知ったことか。天下なんぞ、どうでもええ」と言い放ち、秀頼への心配のみ。家康が三成の合議制を支えると伝えると「豊臣の天下は、わし1代で終わりだわ」。家康は「だから放り出すのか。（国内外に）こんなめちゃくちゃにして、放り出すのか！」と怒声。秀吉は「なーんもかんも放り投げて、わしはくたばる。あとは、おめえがどうにかせえ」と開き直った。
咳込み、息絶えたフリも“猿芝居”。「大嫌いじゃ！」「わしは、おめえさんが好きだったにー」。家康は「（織田信長から）天下を引き継いだのは、そなたである。誠に、見事であった」と最後に賛辞。秀吉は「すまんのう。うまくやりなされや」――。家康の「二度と、戦乱の世には戻さぬ。あとは、任せよ」を聞くと、呼び鈴を鳴らした。
慶長3年（1598年）。血を吐き、苦しむ秀吉が手を伸ばした呼び鈴を、茶々は遠くに置き「秀頼は、あなたの子だとお思い？秀頼は、この私の子。天下は渡さぬ。あとは私に任せよ、猿」――。茶々に顔をつかまれた秀吉は笑い、事切れた。
ムロは「古沢さんをはじめ、演出陣やプロデューサー陣の皆さまが、どのような秀吉の最期を描いてくださるのか、私自身も非常に楽しみにしていました。というのも、毎回、台本を読んで、思いがけない秀吉像に驚かされてきたからです。視聴者の皆さまからも“怖い”とか“サイコパス”といったご感想を頂いて。私としては台本通りに演じただけのつもりだったのですが（笑）。野心から始まり、計算高さを身に付けて、天下を獲った男の最期。第39回の台本を最初に読んだ時、私が知る作品の中で、とてつもなく、もしかしたら最も悲しい終わり方かもしれないと思いましたね」と振り返った。
家康が主人公の今作。秀吉は第29回「伊賀を越えろ！」（7月30日）までは要所要所の登場となった。「演じているうちに、この男は自己分析能力が高く、もしかしたら予知能力さえ持っているかもしれないと気づいた時、各回の点と点がつながって、線として自分の中に落とし込むことができました。先が見えているから、秀吉は平気でプライドを捨てて、猿にも道化にもなれたんだと思います。そう考えると、ダークピエロの表現も格段にしやすくなりました。自己分析能力があって、プライドも捨てることができる人って、恐ろしいぐらい強いですよね。私は今回、そういう秀吉が描かれる情景に乗っかっただけなんです」と明かした。
織田信長（岡田准一）が明智光秀（酒向芳）に討たれた驚きと悲しみを瞬時に切り替えた「中国大返し」、大敗しても最終的には家康を従えた「小牧・長久手の戦い」など「将棋の藤井聡太さんじゃないですけど、何手も先を読める力と、その計算のスピードの速さ。完全なる予知能力に加えて、失敗を受け入れる力。失敗しても、すぐに次のことに頭が回る。そういう能力は信長様より高かったんじゃないかと思います」。しかし、欲望は肥大化した。
我が子が誕生したことにより「もう自分の野心が何なのか、分からなくなっていますよね。靄（もや）がかかって、確実に見えていた先が見えなくなる恐怖を自覚していても、誰にも打ち明けられず、孤独になっていく。傍から見れば、それが狂気に映るのかなという解釈で演じました。唐入りは、自分の野心がなくなることへの恐怖に駆られた可能性もあるなと思ったぐらいです」。そして、家康との最後の対面へ。
「最後の最後に、やっと本音が出ましたけど、秀吉の悲しさも感じました。最後まで嫌な敵として松本くんを支えて終われたらいいなと思っていましたが、天下統一を成し遂げる人間にしかできない会話を2人で交わすことができたのは、とてつもない貴重な財産になっています。敵対している時には特に要らないと思うんですけど、第38回から2人が分かり合うシーンもあったので、松本くんと2人きりでアイデアを出し合い、すり合わせをしました。やはり台本を超えなきゃいけない部分がいくつもありましたから。自分から話し合うことは時に避けることもあるんですが、今回は松本くんの方から声を掛けてくれて、感謝しています」
「秀吉が関ヶ原の戦いまで見えていたかどうかは別として、どのような争いがあったとしても、家康が次の天下人になることは読めていたと思います。家康が天下を獲った後、本当に戦なき世をつくることができるのか。それを楽しみに天に召されたんじゃないでしょうか」
第4回（1月29日）の初登場時から、SNS上には「目が笑っていない」「真顔が怖い」「真意が分からず、底が知れない」などの声が続出。怪演が話題を呼び続けた。敵役として絶大な存在感。最期は孤独や悲哀も見事に体現した。ただ、今作の秀吉はその生涯の一部分。最後の質問で「岡田さんはすべてを演じ切れたわけではないので、役者人生を進めていく中で、また出会えればいいなと信長役に再挑戦したいと語っていました。ムロさんはいかがですか？」と水を向けてみた。
「私は死ぬ時に、生まれ変わっても、もう一度、自分になりたいと思える人生を歩みたいと思っている人間なので。そういう意味でも、最期まで演じさせていただいた秀吉は、もう一度やってみたいですね。今回とは違う秀吉像になるかもしれませんけど」
＝インタビュー（2）に続く＝
「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどの古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。
第39回は「太閤、くたばる」。秀吉は家康と最後の対面。秀吉は「世の安寧、など、知ったことか。天下なんぞ、どうでもええ」と言い放ち、秀頼への心配のみ。家康が三成の合議制を支えると伝えると「豊臣の天下は、わし1代で終わりだわ」。家康は「だから放り出すのか。（国内外に）こんなめちゃくちゃにして、放り出すのか！」と怒声。秀吉は「なーんもかんも放り投げて、わしはくたばる。あとは、おめえがどうにかせえ」と開き直った。
咳込み、息絶えたフリも“猿芝居”。「大嫌いじゃ！」「わしは、おめえさんが好きだったにー」。家康は「（織田信長から）天下を引き継いだのは、そなたである。誠に、見事であった」と最後に賛辞。秀吉は「すまんのう。うまくやりなされや」――。家康の「二度と、戦乱の世には戻さぬ。あとは、任せよ」を聞くと、呼び鈴を鳴らした。
慶長3年（1598年）。血を吐き、苦しむ秀吉が手を伸ばした呼び鈴を、茶々は遠くに置き「秀頼は、あなたの子だとお思い？秀頼は、この私の子。天下は渡さぬ。あとは私に任せよ、猿」――。茶々に顔をつかまれた秀吉は笑い、事切れた。
ムロは「古沢さんをはじめ、演出陣やプロデューサー陣の皆さまが、どのような秀吉の最期を描いてくださるのか、私自身も非常に楽しみにしていました。というのも、毎回、台本を読んで、思いがけない秀吉像に驚かされてきたからです。視聴者の皆さまからも“怖い”とか“サイコパス”といったご感想を頂いて。私としては台本通りに演じただけのつもりだったのですが（笑）。野心から始まり、計算高さを身に付けて、天下を獲った男の最期。第39回の台本を最初に読んだ時、私が知る作品の中で、とてつもなく、もしかしたら最も悲しい終わり方かもしれないと思いましたね」と振り返った。
家康が主人公の今作。秀吉は第29回「伊賀を越えろ！」（7月30日）までは要所要所の登場となった。「演じているうちに、この男は自己分析能力が高く、もしかしたら予知能力さえ持っているかもしれないと気づいた時、各回の点と点がつながって、線として自分の中に落とし込むことができました。先が見えているから、秀吉は平気でプライドを捨てて、猿にも道化にもなれたんだと思います。そう考えると、ダークピエロの表現も格段にしやすくなりました。自己分析能力があって、プライドも捨てることができる人って、恐ろしいぐらい強いですよね。私は今回、そういう秀吉が描かれる情景に乗っかっただけなんです」と明かした。
織田信長（岡田准一）が明智光秀（酒向芳）に討たれた驚きと悲しみを瞬時に切り替えた「中国大返し」、大敗しても最終的には家康を従えた「小牧・長久手の戦い」など「将棋の藤井聡太さんじゃないですけど、何手も先を読める力と、その計算のスピードの速さ。完全なる予知能力に加えて、失敗を受け入れる力。失敗しても、すぐに次のことに頭が回る。そういう能力は信長様より高かったんじゃないかと思います」。しかし、欲望は肥大化した。
我が子が誕生したことにより「もう自分の野心が何なのか、分からなくなっていますよね。靄（もや）がかかって、確実に見えていた先が見えなくなる恐怖を自覚していても、誰にも打ち明けられず、孤独になっていく。傍から見れば、それが狂気に映るのかなという解釈で演じました。唐入りは、自分の野心がなくなることへの恐怖に駆られた可能性もあるなと思ったぐらいです」。そして、家康との最後の対面へ。
「最後の最後に、やっと本音が出ましたけど、秀吉の悲しさも感じました。最後まで嫌な敵として松本くんを支えて終われたらいいなと思っていましたが、天下統一を成し遂げる人間にしかできない会話を2人で交わすことができたのは、とてつもない貴重な財産になっています。敵対している時には特に要らないと思うんですけど、第38回から2人が分かり合うシーンもあったので、松本くんと2人きりでアイデアを出し合い、すり合わせをしました。やはり台本を超えなきゃいけない部分がいくつもありましたから。自分から話し合うことは時に避けることもあるんですが、今回は松本くんの方から声を掛けてくれて、感謝しています」
「秀吉が関ヶ原の戦いまで見えていたかどうかは別として、どのような争いがあったとしても、家康が次の天下人になることは読めていたと思います。家康が天下を獲った後、本当に戦なき世をつくることができるのか。それを楽しみに天に召されたんじゃないでしょうか」
第4回（1月29日）の初登場時から、SNS上には「目が笑っていない」「真顔が怖い」「真意が分からず、底が知れない」などの声が続出。怪演が話題を呼び続けた。敵役として絶大な存在感。最期は孤独や悲哀も見事に体現した。ただ、今作の秀吉はその生涯の一部分。最後の質問で「岡田さんはすべてを演じ切れたわけではないので、役者人生を進めていく中で、また出会えればいいなと信長役に再挑戦したいと語っていました。ムロさんはいかがですか？」と水を向けてみた。
「私は死ぬ時に、生まれ変わっても、もう一度、自分になりたいと思える人生を歩みたいと思っている人間なので。そういう意味でも、最期まで演じさせていただいた秀吉は、もう一度やってみたいですね。今回とは違う秀吉像になるかもしれませんけど」
＝インタビュー（2）に続く＝
