フジテレビ 旧ジャニーズ事務所との関係検証 性加害報道は「議論にすら至っていなかった」

2023年10月21日 14:48

芸能

フジテレビ 旧ジャニーズ事務所との関係検証 性加害報道は「議論にすら至っていなかった」
フジテレビ社屋 Photo By スポニチ
 フジテレビは21日、特別番組「週刊フジテレビ批評 特別版」(後2・00)を放送。旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害問題を巡り、今年4月まで報じてこなかったことについて検証した。
 同局では編成制作局、報道局、情報制作局に在籍したことがある77人の社員・元社員を対象に社内調査を実施。その結果を報じた。

 1999年10月から「週刊文春」がキャンペーン記事を掲載。旧ジャニーズ側はその記事によって名誉を傷つけられたと損害賠償請求を行った。2003年7月、東京高裁は一部について名誉棄損を認めたものの、性加害については「真実性の要件を認める」と判断。その後、2004年2月には上告を退け、高裁の判断を維持した。同局はこの判決を報道していない。

 この件について、社内調査で元社会部記者は「直後にオウム真理教教祖の麻原被告(当時)の判決を控え、それにかかりっきりだったと思う」と証言。元情報番組幹部は「このネタを正面からニュースで扱う認識が全く無く、芸能ゴシップ、スキャンダル的な受け止め方だった。(編成からの働きかけは)一度も無い。取り上げようという意識もないのだから止めようという行動もない」、元報道番組幹部「ニュースとして取り上げる重みがある感じがしなかった。それだけ男性への性加害という問題への感度が低かったと思う」と、そもそもニュースとして取り上げるべきネタだと考えていなかったとした。

 10月2日に同局の番組に出演した当時社会部・司法担当サブキャップだった平松秀敏氏も「当時は芸能事務所と出版社の裁判沙汰、スキャンダルの1つという認識しか持てなかった。いち報道マンとして痛恨の極みだと反省せざるを得ないと思います。ジャニーズ事務所に対する配慮や忖度というよりも当時、この裁判自体にニュース価値そのものを見いだせなかった。だからスルーしてしまった」と話していた。

 また、今年に入り、BBCがジャニー氏の性加害に特集したドキュメンタリー番組を放送。4月には元ジャニーズJr.のカウアウ・オカモトが性被害を訴える記者会見を行ったが、同局はこれらの動きを報じず。4月23日に事務所が聞き取り調査を始めた段階から報道を始めた。

 社内調査で、元報道局幹部は「BBCのドキュメンタリーを見た後も取り上げるべきという意識が生まれなかったのは『スキャンダル』の流れと受け止めていたことに尽きる。裏取りをどの程度できるのか懸念し、積極的に扱うべきとは思えなかった。慎重にならざるを得なかった」と説明。報道幹部は「カウアン氏の主張に対して当事者は亡くなっていて、反論ができない。この件に限らず、一方の話だけを元に報道することは避けるべきで、その意味でもジャニーズ事務所がこの件で動き始めたのがきっかけとなった」と証言している。

 番組出演した渡邉奈都子報道局長は「まず、性加害。特に男性に対する性加害について私たち報道担当者の意識、認識が著しく低かったことが今回の調査で改めて分かった。通常のニュースで扱う案件ではなく、芸能ゴシップであったり、スキャンダルという古い価値観が根底にありまして、報道として取り上げるべきか否かという議論にすら至っていなかった」とした。

 続けて「この性加害、しかも未成年に対する性加害という重大な問題、人権問題に対する私たちの感度の鈍さは被害に遭われた方々の心情を考えますと、報道に携わるものとして深く反省しております」と反省の弁を述べた。
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