なぜ谷村新司さんは中国に愛されたのか?盟友・ばんばひろふみが目撃した愛された瞬間

2023年10月22日 18:25

芸能

なぜ谷村新司さんは中国に愛されたのか?盟友・ばんばひろふみが目撃した愛された瞬間
2010年4月、上海万博の開会式で熱唱する谷村新司さん Photo By 共同
 8日に74歳で亡くなった谷村新司さんの盟友で、シンガーソングライターのばんばひろふみ(73)が21日放送のFM COCOLO「ばんばひろふみ Rock’na 夜咄」で、谷村さんとの思い出を語った。
 谷村さんとは学生時代に知り合い、音楽を通じて、まさに時代を一緒に歩いてきた。たくさんの思い出があるが、中でも強烈に覚えているのが81年、アリスの中国公演に同行した時の出来事だ。

 「空港から天安門の方までバスで向かったんですけど、とにかく真っ暗なんです。ポツンポツンと街灯があるんですが、そこに人が集まってゲームか何かをしている。今の中国からはまったく想像のできない光景でした」

 経済的に発展しているとはとても言えない国内の状況。ポップミュージックが街で流れるようなことは、もちろんない。そんな国にアリスは単身乗り込み、コンサートに臨んだ。「でも観衆はこういうコンサートを経験したことがないから、どうしていいかわからないわけ。1曲終わってもシーン、2曲終わってもシーンとしてるわけですよ」

 すると谷村さんが目を疑うような行動に出た。舞台から下りて、コンサートに訪れていた当時の国家指導者・鄧小平氏の前でギターをかき鳴らしたのだ。

 「鄧小平さんも前でギターを弾かれてびっくりしたと思いますよ。でも、仕方なくだとは思うんですけど、手拍子をしたんです。そしたらですよ、いきなり会場中がウワーっとなった。すごい手拍子が巻き起こったんです」

 盛り上がりたくても盛り上がることができなかった観衆は、最高指導者の手拍子でせきを切ったように熱狂した。「コンサートが終わるまでずっと手拍子が続きました。終わってからも全然鳴り止まない。いや、すごかった。今もあれが目に焼き付いています」

 谷村さんが亡くなった後、中国高官が記者会見の席で「哀悼の意を表します」と追悼したとき、思わず感激してしまったという。「いつも日本のことをボロカスに言ってる人が追悼してくれた。“中国という国は初めて井戸を掘った人をすごく大切にする”。その言葉が浮かびました」

 唯一の心残りは最後に谷村さんと会えなかったこと。夫人には折りを見て体調は聞いていた。「3月に腸炎を手術して年内に復帰ということだったけど、あまりに期間が長いので、なんでなの?と聞いたんです」。夫人の説明では「腸炎は絶食しないといけないので体力が落ちている。傷口が塞がったら体力を戻して来年復帰する」ということだった。

 「彼はとても美意識が高い。見た目をすごく気にするんです。きっとすごく痩せてて、そういう姿を見せたくなかったのでは。美意識の裏返しだったと思う」と残念そうに語ったばんば。最後に「きっと、みんなと会いたかっただろうな、僕も会いたかった」と声に涙をにじませた。 
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