藤井竜王 8冠防衛 大山康晴15世名人に並んだタイトル戦19連勝
2023年11月12日 05:15
芸能
魔法のようなフィニッシュとは対照的に、中盤以降はたっぷりと冷や汗をかいた。得意の先手番で得意の角換わり戦型を選んだにもかかわらず、同学年の伊藤は涼しい顔のまま早指しで応じてくる。どの一手も想定内なのか?激しい攻め合いの中、疑心暗鬼のまま中考を重ね、第1日終了時点では2時間近い持ち時間のビハインドを背負ってしまった。
「中盤の難しい局面で方針が分からなくなってしまい、苦しくしてしまいました」
封じ手直前で角飛交換の打開策を採用。右辺に成り駒3枚をつくって反撃に出たが、その代償として自身の王は薄くなり、伊藤からの猛攻を浴びる。普通なら浮足立つ場面でも藤井は冷静だった。「粘りにいって、後手に決め手を与えないよう複雑な場面をつくるようにしました」。丁寧な受けの連続で、気がつけば後手は弾切れ状態に。満を持してと金で王手をかけ、馬をずばっと切って、はやてのように寄せの形を築いていく。そして最後は詰め将棋そのままの寄り切り劇。
棋界最高賞金4400万円のタイトルを3期連続で制した藤井は「難しい将棋ばかりだが、第3局は比較的うまく指せました」と胸を張った。8冠達成直後でさえ「課題が多かった」と言う藤井にしては珍しく自賛のコメント。手応えをつかんだのも当然。7番勝負のストレート勝ちは昨年の王将戦以来。そしてタイトル戦は破竹の19連覇で、あの大山15世名人の持つ大記録に肩を並べたのだから。
「そのことは知りませんでした。並べたのは光栄ですが、今後も意識せず次のタイトル戦に臨みたいと思っています」
偉大なる先達を抜く可能性がある次の舞台は王将戦だ。熱い正月が再びやってくる。 (我満 晴朗)