KANさん「音楽的にもバカバカしさでも他にないものでありたい」同業者も認める無二のアイデアマンだった

2023年11月17日 19:07

芸能

KANさん「音楽的にもバカバカしさでも他にないものでありたい」同業者も認める無二のアイデアマンだった
シンガー・ソングライターのKANさん Photo By スポニチ
 シンガー・ソングライターのKANさんが12日に亡くなったことが17日、所属事務所から発表された。今年3月に「メッケル憩室がん」を公表し、闘病していた。61歳、あまりにも早い死だった。
 1987年にデビューし、ダブルミリオンを達成した「愛は勝つ」(90年)で一躍名を馳せた。その後もコンスタントに名曲を生み出し続けるメロディーメーカーであると同時に、希代のアイデアマンでもあった。

 6年前のインタビューで、KANさんは「音楽的にも、バカバカしさでも、他にないもので常にありたい」と語った。ひょうひょうとした語り口の中にも、音楽へのこだわりと愛がにじんだ。人を楽しませるシナリオを練るのが大好き。2011年から続くFM COCOLOの野外イベント「風のハミング」をはじめ、さまざまなミュージシャンとのジョイントライブでその才は発揮された。

 上質なコラボ演奏はもちろん、初挑戦企画や超難解なハーモニー、MCでの寸劇まで硬軟織り交ぜた台本・演出を自ら手掛けた。豊富な音楽知識とユーモアセンスで共演者の新たな一面までもを引き出し、観客をうならせた。

 技量と懐の深さが試されるような“むちゃぶり”は時に共演者を戦々恐々とさせたが、KANさんはきまって事前に共演者を飲み会に呼び出し、本音や許容範囲を探っていた。結果的に、共演を機にその才能を認め、慕った同業者は数え切れない。

 秦基博との共作「カサナルキセキ」の企画力も秀逸だった。先にKANさんが「キセキ」、秦が「カサナル」をそれぞれにリリース。後に、この2曲を同時再生すると「カサナルキセキ」が完成するというからくりを明かした。2人がその事実を隠していたことを釈明する「謝罪会見」動画まで作る凝りようで、話題を集めた。これももちろん、KANさんが秦を飲みに誘い、持ちかけた壮大かつ高難度だが、プロの本領発揮となるアイデアだった。

 決して「愛は勝つ」だけでは語り尽くせない現在進行形の天才だったKANさん。その音楽は残された作品で繰り返し味わうことができるが、まだまだ湧き出たはずのアイデアの泉を見ることができないのが無念でならない。音楽もコラボ企画も、まだまだ多くの人々に広め、後輩ミュージシャンにも共有してほしかった。
(萩原 可奈)
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