坂田利夫さん死去 笑いのため“アホ”を演じきったジェントルマン 外食中に母が涙で“反論”した過去も
2023年12月31日 00:30
芸能
実は私生活で「アホ」と呼ばれることはあまり好きではなかった。人気が出始めたころ、親子そろってレストランで食事中に修学旅行の学生から「アホ、アホ」とバカにされた時、母親が「この子はアホとちゃいます。仕事でやってるだけです」と涙ながらに返したエピソードも何度か聞いた。
09年8月に41年続けてきた、前田五郎さんとの「コメディNo・1」を解散することを決めた時も真摯(しんし)に対応してくれた。当時、吉本興業とトラブルにあった相方との決別。大阪市内で直撃すると「間違いありません。ええように書いてください。これからもお客さんに愛されるように頑張ります」ときっぱり。後にも先にも解散ネタで、ここまで嫌がらずに話してくれたのは師匠だけだ。トラブルの影響で仕事が激減する中、会社を通して説明すれば済むのに、いつもと変わらない答えで認めてくれた。
楽屋裏でも若手に「思いっきり頭をどつけよ。中途半端やとオレも痛いし、ウケへんから」と諭していた坂田さん。「感動はいらない。お客さんに笑ってもらって疲れ取れたわと思ってほしい」。最後まで格好いい芸人人生だった。合掌。
(スポーツニッポン新聞社 文化社会部長・森 俊幸)