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「さよ朝」石見舞菜香 驚きのボイスケア「憧れの声で声帯を」効果は…

2018年03月02日 10:00

芸能

「さよ朝」石見舞菜香 驚きのボイスケア「憧れの声で声帯を」効果は…
「さよならの朝に約束の花をかざろう」で主役マキアの声を担当した石見舞菜香 Photo By スポニチ
 公開中の劇場版アニメ「さよならの朝に約束の花をかざろう」(監督岡田麿里)で主役の少女マキアの声を担当している声優・石見舞菜香(いわみ・まなか、19)さん。ふわっとした柔らかな高音の裏には“秘密のボイスケア”があった?インタビュー後編では、意外と“天然”な素顔も見せてくれました。(岩田 浩史)

 劇中のマキアの声から想像した通り、性格はおっとりした印象。ただ、声優を将来の職業と決めていた中学3年生の頃には予想もできないくらいの激しさを見せていた。

 高校入学後に声優養成学校に入りたいと考え、父親に直訴。しかし、「“高校を卒業してからにしなさい”と、なかなか許してくれなかった」。悩んだ末に取った行動が、「養成所に行かせてくれないなら、高校には行かない!」との宣言。これで父親をねじ伏せた。「嫌なことは嫌だし、やりたいことはやりたいんです」。柔らかさの中に強い芯が通っていた。

 ちなみに養成所入りを急いだ理由は焦りにも似た思いがあったから。「当時の私は読書をずっとしているような人で、あまり会話をすることもなく、滑舌が悪かったんです。だから、人より早く(声優の勉強を)始めないとプロにはなれないと思っていた」と、自分なりの計算があったようだ。

 普段の自分については「平和主義で争いは好まない方ですよ」とマジメな表情で強調。受け答えにどこか“天然”の面白さがある。

 そうした中学時代にやっていたというのが独自のボイスケア。これが実にユニークだ。声の調子が悪くなると、小型のスピーカーを喉に当てて口を開き、茅野愛衣や花澤香菜、早見沙織、能登麻美子ら憧れの声優の声を流したという。

 「音って空気の振動ですから、憧れの声(の振動)で声帯を震わせて修復すれば、そんな声になれるのではないかと…」と驚きの理論を展開。さて、効果のほどは?「なかったですね。風邪が治れば、素敵な声になっているのではないかと思いましたが…お馬鹿な考えでした」と苦笑いを浮かべた。

 今作でマキアの親友レイリアを演じている茅野には「憧れるあまり、そんな行動をしてしまいました。すみませんでした」となぜか謝ったそうだ。

 声優デビューを果たした昨年を「夢がどんどん叶ううれしさがある一方で、気持ちを追いつかせるのに大変な1年でした」と振り返る。「ゲーマーズ!」「URAHARA」「クジラの子は砂上に歌う」などでメーン級の役を演るなど、10作品以上に出演した。

 ただ、多くの役を演じながらも、常にマキアが頭から離れない1年でもあった。

 「さよ朝」は、一昨年9月にキャスト陣が集まって台本の読み合わせを実施。その後でアニメの絵作りを行い、昨年9月からアフレコ収録するスケジュールが組まれていた。読み合わせからアフレコまで1年の空白期間があり、それは「マキアについて考える1年だった」という。

 インタビュー前編で、マキアを「自分に似ている」と語った。動乱のさなか出会った孤児の男の子、エリアルを育てる“幼い母”の戸惑いを、声優の仕事を始めたばかりの自身と重ねた。

 普通の母親が味わうことのない感情の表現が求められる難役でもある。10代半ばのような外見で数百年を生きる“イオルフ族”の設定。たくましく成長していくエリアルに、少女のような外見のまま母として接し、内面の成長を見せなくてはいけない。

 マキアとエリアル…2人が並んでいる場面だけを見ると「男女の関係に見える」。岡田監督からは「母親であり続けてね」と求められ、胸に刻んだ。1年間考え続けて臨んだアフレコ。「とにかく難しかった」。

 台本は毎日のように読み続けたが、「何度読んでも涙が止まらないシーンがあった」という。「母としてエリアルを思えば泣いてはいけない場面。しっかりと彼に接しなくてはいけないのに、涙がこらえ切れなかった」と明かす。本番でも収録が中断するほどに泣きむせび、「みなさんにご迷惑を掛けてしまいました」と、声優としての未熟さを反省するように話した。

 最終的に泣かずに収録できたかは聞かなかった。そのシーンのマキアから、エリアルを思う強く深い愛が切ないほどに伝わってきたからだ。悲しくも温かい、優しい感情に胸が締め付けられ、こちらが涙を抑えられなかった。

 デビュー直後の声優が持つ“原石のきらめき”が織り込まれたマキアの声。その声が磨かれ、これから放つ光を見るのも楽しみだ。

 <岡田監督 石見の第一声で「見つけた」>

 岡田監督は公開前の試写会舞台あいさつで、石見をオーディションで“発見”した際のエピソードを披露。声を聞いた瞬間、ノートに「見つけた」と書き留めたと明かした。

 オーディションに同席していたP.A.ワークスの堀川憲司プロデューサーは「何十人、何百人と人が来ますが、時としてパッと出会う一瞬というか、そういう瞬間があります」と解説した。

 岡田監督とは対照的に、石見自身は当時について「自分の日記に反省点をずらっと書き連ねて、このままじゃダメだ…みたいなことを書いていたんです」と述懐。岡田監督や堀川氏の話をこちらが紹介すると、「もう泣きそうですね」と感激の表情を見せた。

 ◇石見舞菜香(いわみ・まなか)1998年4月30日、埼玉県生まれ。17年4月「月がきれい」でデビューすると、立て続けに多くの作品に出演。1メートル58、O型。趣味は散歩と読書。愛称は「マナティ」。

 ◇さよならの朝に約束の花をかざろう 人里から離れて暮らし、10代半ばの外見で数百年を生きる伝説の種族イオルフの少女マキアが主人公。長寿の秘密を求め、攻め込んできた軍によってイオルフの集落は壊滅。マキアは混乱の中で、親を亡くしたばかりの赤ん坊エリアルと出会い、母親となる。成長していくエリアルと、少女のままのマキアはやがてすれ違っていく。

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