【スプリンターズS】牝馬のことはお任せ!斉藤助手が導くママコチャ連覇
2024年09月25日 05:30
競馬
マイルG1・3勝を挙げたソダシを姉に持つ良血。鹿毛(かげ)の妹は白毛の姉ほど見た目は派手ではないが、最初の印象について「パワーが凄いね。女の子でも、どっしりしている。今まで担当してきた牝馬は繊細でカリカリしているタイプが多かったけど、この馬はカイバを食べてくれる。(調整面で)一番、楽なんじゃないかな」と目を細める。
数々のスターホースを育てた池江厩舎の中で、牝馬担当ともいうべき腕利き。斉藤助手はG1・2勝のミッキークイーン(15年オークス&秋華賞)を筆頭にミスエルテ(16年ファンタジーS)、アブレイズ(20年フラワーC)など担当した牝馬で重賞制覇。牝馬の扱い方の秘訣(ひけつ)を尋ねると「たまたまです。巡り合わせもあるんじゃないかな」と笑顔で謙遜するが「普段から馬に優しく接するようにはしている。女の子は特にやね」と教えてくれた。父・正敏さんも元厩務員。所属した松田国英厩舎で担当した牝馬のダイワエルシエーロ(04年オークス)、ダイワスカーレット(08年有馬記念などG1・4勝)などがG1制覇。牝馬の扱い方が上手なDNAを受け継いでいるのかも!?
牝馬にしては珍しい叩き良化型。特に休み明け2戦目の成績は4戦4勝と負けなしだ。昨年のスプリンターズSも北九州記念2着から中5週のローテで制した。今年はセントウルS(2着)を使って連覇を狙う。
秋初戦は57キロの酷量を背負い、大外18番枠から0秒1差の接戦に持ち込んだ。斉藤助手は「使った後も調整は問題なく来ている。カイバをバリバリ食べてくれるし、筋肉もついてきた」と上昇ぶりを口にする。さらに「いい意味で落ち着きも出てきた。以前はムキになって走るところもあったみたいだけど、大人になってきたのかな」と心身ともに充実ムードが漂う。
牝馬らしく気温の高い時季も得意。「春と比べても、毛ヅヤや馬体の張りは今の方がいい。成績を見ても、暑い時季の方がいいでしょうね」と歓迎する。これまで5~10月に出走したレースは【6・2・1・1】の好成績、敗れた4戦はデビュー戦と休み明けだった。V条件がそろった今回は史上4頭目となる当レース連覇を期待できる。「中山は時計が速いし結局、前に行かないと駄目かな。去年みたいなレースができれば」と頼れる名手・川田に託す。
◇斉藤 勲(さいとう・いさお)1971年(昭46)3月28日生まれ、滋賀県出身の53歳。栗東高校卒業後は大津プリンスホテルに就職。6年で退職して信楽牧場で経験を積み、99年に栗東トレセン入り。最初に所属した大久保正陽厩舎の解散に伴い、池江厩舎に移った。ミッキークイーン、ミスエルテ、アブレイズなど池江厩舎の牝馬担当として有名だが、牡馬のペルシアンナイト(17年マイルCS)でもG1制覇。趣味はゴルフ。
【取材後記】厩務員だった父の背中を見て育った斉藤助手。社会人になっても競馬に興味はなかった。高校卒業後は大津プリンスホテルでウエーターとして6年間勤務。「レストランやルームサービスを担当していた。同級生がトレセンで働いてたし父も厩務員で自然とこの世界へ、というのはあったかな。入る時には父が牧場を紹介してくれた」と振り返る。
ホテルマンからホースマンへ。「世界は違うけど社会に出たら我慢しないといけない時もあるし忍耐強くはなったかな」。新天地でG1タイトルの勲章も手にした。趣味のゴルフはスコア70台の腕前。「最近は崩れることはないかな。結局はメンタル。仕事もそう。G1でも平常心でいきましょう」と笑った。取材には、いつも丁寧に応えてくれる。人だけでなく馬への接し方もそう。その優しさに馬も応えてくれるのだろう。(寺下 厚司)