29年目のJリーグが問われるもの

2021年02月26日 14:14

サッカー

 【大西純一の真相・深層】2月26日にJリーグが開幕した。今年で29年目、大きな転換期を迎えている。昨年来の新型コロナウイルス感染症の影響で、今季も様々な制約がある。赤字決算になるところも多く、各クラブとも経営的に苦しんでいる。
 その結果、ほとんどのクラブは今季緊縮財政を強いられている。補強費も削減されて、狙い通りの補強ができたチームは多くはない。収入面について言えば、スポンサーをつなぎ止めても減額になったり、スポンサー数が減ったりしている。深刻なのは入場料収入で、観客数の上限が決められて満員のスタジアムは遠いものになってしまった。中でも頭を抱えているのは年間シートで、毎年購入していた人が「行きたいときだけチケットを買う」と、考えるようになり、購入者が大幅に減少したという。

 そこで問われるのが、「Jリーグの魅力をどうやって取り戻すか」だろう。サポーターがなぜクラブを応援するのか、ファンがなぜJリーグを見に行くのかを考えることが重要だ。29年前にJリーグが開幕したときに言われたのが「ひたむきに戦う姿勢」「ファンとの距離の近さ」「斬新さ」「メディアの露出度」などだった。

 できたばかりのリーグで10チームは横一線、がむしゃらにボールを追い、全試合勝ちに行ってひた向きに戦った。リーグも攻撃的なサッカーを促進するために引き分けなし、Vゴール方式の延長戦を採用した。ファンに対しても常に練習を公開して、練習も含めた毎日がプロモーションだった。勝つために他のことは犠牲にするのではなく「勝つこと」と「露出させること」を同列に考えていた。さらにリーグが主導して10チーム合同でグッズを制作したり、ユニホームの色を調整した。川淵三郎初代チェアマンや各クラブの社長は積極的にメディアに対応して、リーグやクラブの考え方を発信し、世間にJリーグを浸透させていった。リップサービスもあったし、時には都合の悪い話もあったが、関係者は「それでも話題になった方がいい」と前向きだった。

 いまはSNSで各クラブが情報発信できるようになったこともあって、メディアへの対応はがらりと変わった。クラブ同士が情報発信を競うこともない。川淵さんが「Jリーグが成功した要因のひとつはメディアが協力してくれたこと」と言っていたが、いまではメディアをうまく使おうと考える人は少なくなった。

 29年前に戻れというわけではないが、「あのときの姿勢」に学ぶものはあるはずだ。既にJクラブは10から57に増えている。開幕当時の熱気を知らないチームや関係者の方が多いのも現実だ。未来へ向けてJリーグが生まれ変わるいいチャンスだと思う。こう言うときこそ、原点を見つめ直してほしい。 

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