フィッシングニュース
イシナギに振られても 師弟愛で顧客一本釣り
2018年07月15日 07:47
社会
右舷トモのモハメッド・アスラムさん(47)は、水深69〜78メートルのポイントで底上3メートルのタナを保ちながらサバを泳がせる。当たりはいつ来るか分からない。昨年は38キロの良型を釣った。
愛称は「ジロー」。30年前にスリランカから来日した。現在は群馬県前橋市で解体業、中古車販売などを行う会社を経営している。
「夜も寝ないで一生懸命働いて、いまは少し余裕ができたから釣りをするようになった」と流ちょうな日本語で話す。釣りをしながらもあちこちから仕事の電話が入る。
釣りの“師匠”は、伊勢崎市の飯島衛さん(76)。釣り歴40年、仕掛け作りが得意な元瓦職人とは3年前に地元釣具店のスタッフの紹介で知り合った。以後、連れだって静岡県の稲取などへ出掛け、キンメ、ベニアコウなどの美味な高級魚を釣っている。「性格が素直で真面目」とは飯島さんの弟子評だ。
ジローさんが使っている金色の電動リールは40万円したという。「釣れた魚はお得意さんのところへ持って行く。それが俺の営業ね。魚をあげると仕事が入る。(リールを買った)元は取ったよ」と白い歯を見せた。
気前の良い飯島さんは釣れた魚は自分が食べる分だけ確保して、残りは弟子にあげて“営業”を助けているのだそうだ。
ジローさんの奥さんは日本人。10年前に日本国籍を取得した。いまや35人の従業員を抱える社長。異国の地で成功したいまも、貧しかった子供の頃は忘れられない。
「港で仕事をしていたお父さんの給料じゃ足りないから、11歳から働いて家を支えた。映画館で明け方までお菓子を売って、少し眠って学校に行く。4人きょうだいの長男だから仕方がないね」
来日してからも10年間、きょうだいのために仕送りを欠かさなかった。釣りを楽しむのは苦労した自分へのご褒美なのだ。
スリランカに戻ってインド洋で釣りをするときもある。今年、15キロのヒラアジを上げた。「ボートが小さいから転覆しそうになって怖かったよ」
「今日は食わないなあ」と渡辺清志船長の嘆き節で10時半に納竿。船中、誰の竿にも当たりは来なかった。
「次は釣れるよ、きっと」。どちらともなくそう言う異色の師弟、今度は2人で何を狙うのか?
(今季最大は55・4キロ!!/)〇…基吉丸で上がった今季最大のイシナギは55・4キロ。6月17日に柏市の豊田正巳さん(54=自営業)が釣った=写真。「餌はスルメイカでした」。豊田さんはキャンピングカーに泊まって連続で釣りを楽しむ大物ハンターでもある。
▼釣況 東日本釣宿連合会所属、勝浦川津港・基吉丸=(電)0470(73)3521。出船は午前4時。乗合料金1万1500円。