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カワムツ、オイカワ、ウグイがヒット!魚の気持ちになり川に溶け込む?呼び戻し釣り
2024年09月25日 05:30
社会
「よく似た釣りがある」と教えてくれたのは、シマノのフィールドテスターで、栃木県鹿沼市で「鮎掛塾」を主宰する加藤正士さん(66)。粕尾川水系の思川で指導を仰いだ。
餌の川虫は現地調達というワイルドさ。この日は、トビケラというガの幼虫で、川底の石にへばり付きニョロニョロと身をよじるクロカワムシを餌にした。これが、少し大きな石を拾うとほぼ見つかる。「こんなにいる川は珍しいかも。川が奇麗な証拠」と加藤さん。流れの緩む岩裏目掛けて仕掛けを流す。「流し切ったら、少し間を置いて上流に戻し、また流す…を繰り返してください」。竿先を水に差し込み、前後に動かす。
漫画では、伸び悩む力士が、この釣りで開眼のきっかけをつかむ。魚を誘うように「流して」「戻して」を繰り返す動きから、相撲にも通じるリズムとタイミングを体得。大技「呼び戻し」をモノにする。そんな物語に浸りつつ、竿を動かすと当たりはすぐに来た。5センチ強の小さなカワムツだが、竿や仕掛けが繊細なこともあり、結構楽しめた。
ちなみに現地の呼び名は「ズーコン釣り」。竿を“ズ~、コン、ズ~、コン”と動かすからだそうだ。釣りの教則本には、腕を前後することから「ピストン釣り」と書かれている。
ほぼ入れ食いでカワムツ約10匹を釣り上げたが、漫画のようにオイカワも釣りたいところ。雑魚扱いされがちだが、オスの婚姻色の美しさは釣り人の誰もが認めている。銀白色の体に青緑の水滴がまばらに垂れ落ちたような模様が特徴的だ。
「鮎掛塾」勝俣満さん(56)のアドバイスでポイントを替え、約20メートル下流のチャラ瀬へ。オモリを付けて餌を流す。「川底の石を揺らしてみてください。石に付いた川虫が流れるので、そこに餌を紛れ込ますと釣果が上がります」と勝俣さん。漫画にもそんな場面があった!試すと一発で来た。婚姻色は控えめだがオイカワだ。後で知ったが、オイカワは浅瀬、カワムツはやや深場で棲み分けることが多いようだ。
この日は約2時間半でカワムツ約15匹、オイカワ約10匹、ウグイ2、3匹を釣って納竿。難しい釣りではない。だが決して退屈な釣りではない。澄んだ水に膝まで漬かり、せせらぎの音に包まれ、魚の気持ちを想像して餌を動かす。こんなに川を感じられる釣りがあるだろうか?釣れない魚との駆け引きも面白いが、山や川と一体になるような感覚も釣りの楽しさだと改めて思った。