東京五輪あと800日、河端朋之 後方一気で“金”の大輪を

2018年05月16日 05:30

五輪

東京五輪あと800日、河端朋之 後方一気で“金”の大輪を
自転車トラック・ケイリンに出場する河端朋之は東京五輪で金メダルを狙う Photo By スポニチ
 東京五輪の開幕まで、16日であと800日。車輪のように○(まる)が並ぶ節目の日に、ピックアップするのは自転車のアスリートだ。自転車トラック・ケイリンの河端朋之(33=日本競輪選手会)は強烈な追い上げを武器にして、3月1日の世界選手権(オランダ)で日本勢25年ぶりの表彰台となる銀メダルを獲得した。日本発祥の種目で金メダルを目指す。
 ラスト半周から、河端のショータイムが始まる。全力勝負の中でも目立つ飛びきりの脚色で、次々と前をかわしていく。2月のアジア選手権は強烈な追い込みでV。17年世界王者でリオ五輪銅メダルのアワン(マレーシア)を破った。3月の世界選手権は日本勢25年ぶりの表彰台となる銀メダルをつかんだ。2年後の頂点は、現実的なターゲットに変わった。

 「東京五輪で金メダルを狙いたいですね。今までは成績が出ていなかったので、こういう話をしても夢に近い感じでした。でも、目標としてそこを見据えられるようになってきたのかなと思います」

 競輪学校時代から続く丸刈りがトレードマーク。世界にとどろく剛脚なら、ビッグマネーを稼いでいるように思われるが、戦績にビッグタイトルはない。昨季までに稼いだ賞金はプロ9年間で1億1470万2500円。年間1億円が珍しくない競輪において、目立った存在ではない。

 「自分は競技(ケイリン)が得意だから、ギャップがあるのかな(笑い)。でも、もう少しギャップを埋めたいですね」

 転機は、リオ五輪代表を逃した後に訪れた。「もう競技(ケイリン)をやめよう」と思っていた直後の同年11月、フランス人のブノワ・ベトゥ氏(44)が、トラック種目の短距離日本代表ヘッドコーチに就任した。「メダル請負人」は、東京五輪の会場となる伊豆ベロドローム(静岡)で代表を年中鍛える方針を掲げた。

 従来は、約1週間の強化合宿が年間に数回行われるだけだった。それが一変。河端は拠点の岡山から静岡県伊豆の国市に移り住み、1周250メートルの木製バンクという五輪基準の施設で鍛錬を積んだ。本業の収入面の保証、最低出走回数の優遇など連盟のサポートも受け、競技に専念できる環境が整った。

 「スピードを長く維持する形から、短い距離で大きなパワーを出すトレーニングに変わった。短い距離なら世界と引けを取らないと、ブノワ(・ベトゥ)とジェイソン(・ニブレット日本代表コーチ)に言われました」

 焦って先に仕掛けて沈んでいたのは過去の話。後方一気の戦術で、才能を開花させた。2月のアジア選手権で優勝しなければ、3月の世界選手権への出場資格がなかった。サクセスストーリーは、文字通りの大まくりで実現させた。

 ケイリンは日本発祥の種目ながら、競輪とは使用する自転車もバンクも異なる。前者のフレームはカーボン製で、後者はスチール製。1周の長さも、路面の材質もケイリンと違う。似て非なるものながら、ギャンブルの世界でもまれていることが、ケイリンに生きているのは事実だ。

 「競輪の方が動きがクレイジー。相手をこかすようなブロックもある。そこでやっているから、危険な場面でも突っ込んでいける」

 2000年シドニー大会で正式種目に採用され、日本人で表彰台に立ったのは08年北京五輪の永井清史(34)の銅メダル1度だけだ。ケイリンが生まれた国に帰ってくる初めての五輪。母国の意地を見せるのは、河端の末脚に違いない。

 ◆河端 朋之(かわばた・ともゆき)1985年(昭60)2月7日生まれ、鳥取県東伯町(現琴浦町)出身の33歳。東伯中では陸上部で短距離。倉吉工(現倉吉総合産)で自転車部顧問の担任に勧誘されて競技を始める。卒業後に競輪学校に入り、09年プロデビュー。現在S1選手でホームバンクは玉野(岡山)。競技ではスプリント、チームスプリントでも主力。スプリントは14年アジア大会で銀、15年アジア選手権で金。ケイリンは今年のアジア選手権で金、世界選手権で銀。1メートル70、79キロ。胸囲97センチ、太腿60センチ。背筋力210キロ。ケイリンの世界ランキングは3位。

 ▽ケイリンと五輪 日本生まれのスポーツとして柔道に続いて2番目の五輪種目となったのが00年シドニーから。5〜8人の選手が、1周250メートルのバンクを8周(2000メートル)で争う。先頭選手が受ける風圧のハンデを解消するため、先頭誘導員が付く。先導は時速50キロになるまで徐々にペースアップし、残り2・5周で離脱。そこから駆け引きが激化し、ラストはスプリント合戦。最高速度は時速70キロ近くになる。五輪は予選、準決勝、決勝で争われ、予選で敗れても敗者復活戦がある。男子の五輪は英国勢が3連覇中。

この記事のフォト

おすすめテーマ

2018年05月16日のニュース

特集

スポーツのランキング

【楽天】オススメアイテム